隣の席の室井くん①




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次の日から、早速文化祭の準備が始まった。


昨日まで、夏休みムードが消え切らない雰囲気だったのになんだか一気に文化祭モードだ。



「純~!!そこの絵の具取って!!」

「はいよ」

「あ、あと買い出し班が戻ってくるまでに採寸しといて」

「はいはい」



テキパキと指示を出しながら作業を進めていくさっちゃんの傍らで、アタシは言われるがままに与えられた業務をこなす。



教室の端に寄せられた机のせいかいつもより広々とした空間に、木材やら、段ボールやら布やら道具やらがあちらこちらに散らばっている。


衣装班のアタシたちは
とりあえずさっちゃんに言われるがままにメジャー片手にお化け班に徴収をかける。



「・・・日吉さん」

「ん~?なに室井くん」

「なんで俺まで?」



メジャーを手にしたアタシに
腰回りを計られる室井くんは、少しくすぐったそうに身をよじりながら不思議そうな顔をする。


「なんかね、呼び込み班も一応衣装着用らしいよ」

「そうなんだ?」



・・・しかし、

ウエスト58cmって・・・


細っっ!!

アタシより細いだろ!!確実に!!!!




「俺のは日吉さんが作ってくれるの?」


見上げた先の室井くんが
眼鏡越しにアタシを見下ろす。


「いや~、どうだろう。とりあえず採寸してパース引いて、あとは適当に振り分けられるみたいだから」

「そっか」



少し不満げな室井くんに首を傾げれば
頭上の室井くんは、髪の毛で隠れた表情を少し覗かせながら


「日吉さんが作ってくれるなら俺、喜んで着るのに」

と、笑う。




「む、室井くん!!動かないで!!」

「動いてないよ~」




もう!!やめてほしい!!
今だに慣れないんですよ!!こういうの!!


本当、この人気を抜いてると
突然コロッとストレートに思ったこと言うから油断出来ない!!



「日吉さん」

「ななな、なに!!」

「・・・指の細さとか、必要かなぁ」

「・・・・・・」



テンパりすぎだろう自分。


無言で、スルリと室井くんの細い指からメジャーを抜く。



「あれ」


目の前の室井くんの白くて長い指に視線が止まる。


「室井くん、指先になんか出来てるよ」


室井くんの指先には
少しだけ固くなったような盛り上がりがあった。


「あぁ」


その指先を見ながら


「これね、タコ」


とゆっくりと答えた。





「タコ?」


「うん、こうね、ギターの弦押さえてるとね指先が段々固くなってくるの」


控え目にギターを掲げる仕草をしながら室井くんが説明してくれた。


「室井くん今もギター弾くの?」


「最近は曲作りが多かったから、皆でコード考えたりするのにたまに。でもほとんど俺は弾かないよ、これは昔の」



採寸を終えた室井くんが
制服を直しながら少し笑う。


「昔はタコが出来るほど弾いてたんだ」


アタシの言葉に、髪の間からちらりと見えた眉を少し下げながら、コクリと頷いた。


「亮介とか、俺なんかよりもっと凄いよ」


「あ~ギタリストだもんね」



ザワザワと賑やかな教室の中で、のんびりとした室井くんのテンポと向き合っているとこっちまでのほほんとしてくる。


ーーーそんなアタシたちに


「うおらぁぁっっ!!そこ!!呑気に微笑み合ってんじゃないわよ!!やること腐る程あるんだからちゃっちゃと作業に移りなさい!!!!」


恐怖のセクシー隊長から怒号が飛ぶ。



「・・・怖いね・・・松坂さん」

「本気で怒った時のさっちゃんは怖いなんてもんじゃないのだよ室井くん」



ヒソヒソと、囁き合ったのは言うまでもない。