「いいじゃない別に、減るもんじゃあるまいし」
サラッと言い放つさっちゃんは、しがみついている相沢くんを足蹴にしながら自分の席へと着席した。
「・・・松坂さんまで」
むーっと、膨れ面をした室井くんは、ますますご機嫌ナナメになってしまった。
「日吉チャンはどう思う?」
「え?ア、アタシ?」
相沢くんが突然アタシに振ってきた。
慌てふためくアタシを、隣の席から前髪と眼鏡越しにじーーっと見つめてくる室井くん。
・・・あぁ、やめてください
そんな縋るような目で見ないで下さい。
「日吉チャンも見たいよなぁ!!?」
「いや、アタシは・・・」
そこまで言いかけた時に
キンコーン・・・
予鈴の音が鳴り響いた。
「ちぇ~、んじゃ、とりあえずこの話はまた後でっつーことで!!」
「だから嫌だってば」
「じゃ~なぁ!!」
片手を上げながら
台風のように足早に相沢くんは教室を後にした。
それをゲッソリと見送りながらも
「そんなに嫌なの?」
さっちゃんが室井くんに尋ねる。
室井くんは無言のままこくり、と頷いた。
「変装すりゃバレないわよアンタだって」
さっちゃんまでヒャヒャヒャと同じことを口にする。
奴の仲間か。
「人前で歌うのだっていつもライブでやってんならいい加減慣れたでしょ?」
「規模が違うもん」
「規模?」
「ライブハウスより、体育館のほうが広い。あんな人数の前で歌ったら気絶する」
仮にもSnakeFootのボーカリストが何を今更・・・
あんだけの歓声を浴びながら高らかに絶叫している人とは思えない発言だ。
呆れ顔で室井くんを見たさっちゃんが、次にアタシを見る。
「アンタの彼氏は、本当軟弱ね」
「失礼だな」
本人目の前にして
そんなこと言うんじゃないよこの娘は。
「ま、なんにせよ、アイツはしつこいわよ~、諦めないわよ~、幼馴染のアンタが1番よく知ってると思うけど」
まさにしつこく付き纏われているさっちゃんの言葉には説得力が漲っていた。
それに、
「・・・だからウザいんだ、亮介は」
と、室井くんが珍しく舌打ちをした。
・・・おぉ、貴重。
主に、対相沢の時に出る
ブラック室井である。
