隣の席の室井くん①




「学祭?バンド?」


頭を傾げる室井くんの顔、いや、もとい眼鏡には
意味がわからないと書いてある。


「いやさ~、丁度去年から体育館でのステージ発表やってんじゃん?ほらよ~去年もバンド何組か出てたけど、皆ショボイだろ!!ダメだろ!!本当のバンドっつーの見せてやろうぜ!!」



声のボリュームを抑えつつも、意気揚々と喋る相沢くんの瞳は期待で満ち満ちている。


なんでわざわざ小声で話すかっていったら、もちろんそれは室井くんがSnakeFootのボーカルだってことが秘密だからであって…


なのに、文化祭でバンドをやろうって・・・
そんな馬鹿な。


室井くんも恐らく同じことをおもったのであろう


「馬鹿じゃないの」


と、そっけなく言い放ち
相沢くんの手から奪われた本を取り替えした。



「だ~いじょ~ぶだって!!いつもみたいに変装すりゃいいじゃん!!バレね~バレね~!!」

「やだよ」

「なんでだよ!!」

「大体、やなぎんもイッチーも学校別だもん、出られるわけないじゃん」

「ヒャヒャヒャヒャ!!その辺ばっちり!!さすがに他校の奴がステージに上がるワケいかねぇから、軽音部からそこそこのベースとドラム引っ張ってきた!!」



・・・そこそこって。
軽音部の方々に失礼だよ。



「それに引き替えお前は同じ学校だしよ~!!問題ナッシング!!」

「馬鹿じゃないの」



二度目の¨馬鹿じゃないの¨来ました。

はぁ、とため息をついた室井くんは


「大体、俺は今のバンドだけでイッパイイッパイ」


といかにも嫌そうな声を出す。


「大丈夫だよ!!曲も大体形になったじゃねぇかよ」

「歌詞まだ書いてないし、曲も全部覚えてないもん」


そう、この前から
「書けない~」と室井くんはずっと頭を抱えている。

どうやらSnakeFootの曲の歌詞担当は室井くんらしく
それにもビックリしたんだけども。



「大丈夫!大丈夫!なんとかなるなる!!そのうち神が降りてくっからよ~」



ヒャヒャヒャは相変わらず楽観的である。



「な?やろうぜバンド!!」

「無理」

「なんで!!」

「何回言わすの」

「何回でも聞くわ!!俺が納得できるまで!!」



しつこい男だな。
金髪ヒャヒャヒャよ。



でも、体育館のステージの上で唄う室井くんかぁ。
想像つかないな。



「俺、学校の人達の前で歌う気なんてないからね」

「だからなんで!!」

「注目されるの嫌」

「いつもライブで見られてんじゃんか!!」

「あれは別。俺じゃないし」

「は?お前だろうが!!」

「俺じゃないもん。¨ショウ¨だもん」

「屁理屈言うなよー!!!!」



小声でヒソヒソと言い争う二人の背後に



「・・・なにやってんのアンタらは」



文化祭の実行委員長に、出し物を提出しに行っていたセクシー隊長が仁王立ちでご帰還なされた。



「さっちゃ~ん!!翔が屁理屈言う!!」

「うるさい亮介、帰れクラスに」



珍しく低いトーンの声を出す室井くんは、本当にバンドをやりたくないらしい。


「なんなのよ」


さっちゃんの視線にアタシも苦笑いして、これまでの経緯を話す。



ーーーーーー
ーーー


「アッハッハッ!!いいじゃない!!やりなさいよ室井!!」



この人も、相沢氏寄りらしい。