隣の席の室井くん①




        * * *




長かった夏休みもあっという間に終わり9月になった。


久しぶりに会うクラスメートは、こんがり日焼けした子もいれば、なにをどうしたのか黒かった髪を染めイメチェンした子まで色々で


まぁ、それぞれが夏を満喫したんだろーね。
といった様子で。



「これが噂の残暑ってやつなんですかね・・・」



机に寝そべりグダっとするアタシは相変わらずで



「暑いね」



隣で本を開きながら
涼しげにしている彼も相変わらずである。



最近、二人で会う時は
前髪上がってたりすること多いから、なんか久しぶりにキタローバージョンを見る気がする。

隣の席から、こうして室井くんを眺めるのも久しぶりだ。


同じ夏を過ごしたとは思えないほど白い室井くんをじーっと見つめながら


「ほーんと室井くんは、色白だねぇ」


と、零す。


アタシの視線に気付き本から視線を上げた室井くんは、こてん、と小首を傾げる。


「俺は、日吉さんくらいが羨ましいよ。健康的でいいじゃん」

「いやー…女子的にはやっぱり色白に憧れますよ」


そう返せば


「いや…白すぎてむしろ心配されちゃうくらいだし。具合悪い?ってよく聞かれる」

「いや…うん、ね」


確かに。白すぎてたまに本気で心配になる時もある。



そんななんでもない話をしながら、ざわつく教室の中で笑い合うアタシ達。

実に平和である。


「それにしても…あそこの2人はほんとに目立つね」


視線を向けた先には、教室のドア付近でキラキラ金髪を携えたヒャヒャヒャの彼と、相変わらず言い合いしているさっちゃん。


この夏、テニス部の地区大会で見事優勝を掻っ攫った
さっちゃんは、県大会でも中々の成績を勝ち取った。部活詰めだったからか、アタシ以上に健康的な色に仕上がっている。


「見てるだけで目がチカチカしてきちゃうね」


本のページをペラリという紙が擦れる音と共にめくりあげながら軽く口元に室井くんが笑みを作る。


今日の室井くんの本は
¨戦慄!!実録ほんとうにあった恐怖現象¨だ。


夏だからですか?
残暑の厳しさをそれで凌ごうって魂胆ですか。


だからあなたはそんなにも涼しそうなんですか。



・・・なんてツッコミはさておき。


室井くんの言葉に視線を
再び戻す。



単品でも目立つあの二人はセットになると尚目立つ。

黙ってりゃ羨ましい位に美男美女カップルに見える。
よく漫画とかに出てきちゃうような、キラッキラの美男美女だ。


だが、夏休みを経過した今もあの二人が付き合い出したという話はなく、今だ抗争状態。

しかしながら相沢くんが
あの調子だから、さっちゃんラブなのは一目瞭然。

既に周知の事実なのだ。



何気に気が合うと思うんだけどな。
いっそ付き合っちゃえばいいのに。


SとMで




・・・一方のアタシたちはといえば



「今日のホームルームって何の話するのかなぁ」

「学祭の出し物決めって言ってたよ」

「学祭かぁ・・・そんな時期なんだね」



興味なさげな室井くんと
それにのほん、と答えるアタシ。


さっちゃんたちみたいに悪目立ちすることもなく
誰に何がバレるわけでもなく


相変わらずのスローペース。


「眠くなっちゃうね」

「いやいや、参加しましょう室井さん」

「あ、でも実行委員松坂さんなんだっけ」

「そうだよ、居眠りなんかしようもんなら、絞め殺されるよ」

「あはは、それはちょっと嫌だな」



セクシー隊長怒らすと
怖いのよ室井くん。


ヤンキーも平謝りする程のガンが飛んでくるよ。