隣の席の室井くん①





「翔よ~、」


亮介が溜め息をつきながら頭をボリボリとかく。

珍しく少し困った顔をしながら。



「やっぱまだ上手くいってねぇの?¨あの人¨と」



亮介の言葉に、顔にかかった前髪を再び触る。



「最近、全然会ってないから」

「忙しいもんなぁ、歩さん」



¨あの人¨の名前に
ぴくり、と反応してしまう。


そんな俺を見て



「まぁ~何はともあれ!!折角日吉チャンと出会ったんだからよ~大事にしろよ~!!」



ヒャヒャヒャと笑いながらおちゃらけた亮介が、いつもの調子で軽く締め括る。


馬鹿でうざいけど、たまに空気を読む。


笑い声がイラっとするけど亮介なりの気遣いなのは
流石に付き合いが長いだけあって分かる。



そんな亮介を尻目に、沈黙を守っていたイッチーが



「曲名、どうする」



と、突然話題を戻した。



「ん?あ、あぁ」



場を見守っていたやなぎんが突然話を振られ間抜けな声を出す。



「だ~から~!!いいじゃんよ!!決まんねぇんだから¨伊達眼鏡¨で!!」

「いいわけないだろ」

「んじゃあ¨アフロ¨で!!」

「・・・わたあめ」

「却下」






ライブまで、あと


2ヶ月。





それまでに


もう少し、体力つけないと多分俺はステージで倒れるだろう。



それに、
亮介のあのご機嫌な曲に歌詞もつけなくちゃなんない。



やることはたくさん。



バイトもしなくちゃ


歌も覚えなきゃ




けど、日吉さんに

会いたいなぁ。






少しだけ、こっそりと
胸の中で呟いてみた。