ーー目を閉じた先に
イメージした映像が浮かぶ。
それを言葉にして吐き出しながら、音を紡ぐ。
地声ギリギリのハイトーンを、スタジオの天井に向けてぶつけていく。
それを取り囲む楽器の音が波になって狭い部屋中に響き渡る。
あぁ、
眩暈がしそうだ。
心地好い、眩暈。
最近、唄うことが
少しだけ
楽しい。
ーーーーーー
ーーシャァァァンっっ!!
部屋に響いたイッチーのシンバルの音で演奏が終わる。
ぐるり、と視界が
反転する。
倒れないように、両足でなんとか体勢を整えながらもふらり、と足元がふらつく。
「おい、翔、大丈夫か?」
ふう、と少しだけ息を整えたやなぎんが、ベース片手にそんな俺を覗き込んだ。
「ヒャヒャヒャ!!い~ね、い~ね!!いい曲じゃんコレ!!ぜってぇライブ盛り上がるって!!」
余裕そうな亮介が、踏ん反り返りながらヒャヒャヒャと笑う。
「予想以上」
スティックをくるくる回しながら無表情で呟くイッチーは、どこか満足そうだ。
「高・・・高い」
俺は喉を押さえながら振り絞るようにしてなんとか声を発した。
裏声を使うわけじゃなく
地声のハイトーンだから
思い切りお腹から声を出す。
そのせいか、腹筋が痛い。
酸素が薄い。
こんなの歌ったあとに他にも何曲も歌ったら
絶対死んじゃう。
ライブ、俺体力もつかな。
「確かにこのサビ高いよな」
やなぎんが、人事のようにサラリと言う。
「ほんっとだよ!!コーラスやってる俺の身にもなれって!!」
コーラスをやるのはいつも亮介。
曲によっては声質的にやなぎんの時もあるけど、大体が亮介。
「いや、でもなんかブリッジの盛り上がり方にしては、サビがちょっと物足りなかったからさ」
イッチーの作ってきた段階ではこんなに高くなかったんだ、この¨伊達眼鏡¨。
けど、やなぎんのアレンジが加わってものすごくキツイことになった。
作曲者のイッチーは「いいと思う」とか言って、簡単にオッケーしちゃうし。
「でも、サラッと簡単そうに出してるように聞こえる」
ツンタン、ツンタン、と
軽くリズムを刻みながらイッチーがそう言うから
「・・・簡単じゃないよ」
俺は溜め息交じりに
うなだれた。
「でもよ~、本当翔歌い方変わったよなぁ~」
そんな俺を見下ろしながらピンクのギターを肩から下ろした亮介が、まじまじと言った。
「あぁ、変わったな」
やなぎんも、続く。
自分じゃよくわかんないけど、最近皆そうやって言うんだ。
