「絶対やだ」
そんな3人にそっぽを向き俺はテーブルに背を向けた。
流れ的にそうなるの分かってたけど、やだ。
「ヒャヒャヒャ!!だぁってよ~しゃあねぇじゃんかよ~!!両手空いてるのお前しかいねぇだろ~がよ」
うわ~むかつく。
亮介むかつく。
こいつ絶対今楽しんでる。
俺がタンバリン片手に歌ってるとこ想像して楽しんでる。
「翔しかいない」
イッチーまで
そんな真剣な顔して言う。
ふわふわ、アフロを揺らしながら。
「やだ。無理」
これだけは譲れない。
だって、
大体こんな明るい曲どんな顔して歌えばいいの。
自慢じゃないけど普段かなりの無表情で歌う俺が
突然タンバリン片手に「ひゃっほ~い♪」とか言いながら歌いだしたら
お客さんドン引きでしょ。
ありえない。
「そんな顔するなよ翔」
やなぎんが苦笑いで
俺の肩を叩く。
「楽しく歌えばいいんだよ」
「俺、ステージ上で笑えないもん。タンバリンだけ浮くよ」
「大丈夫だぁって!!いつもみたいにお尻フリフリご機嫌に歌えばい~んだって!!」
「・・・俺がいつそんなことしたの」
「まぁまぁまぁ」
ヒャヒャヒャヒャ笑う亮介と、眼鏡越しに亮介を睨む俺の間に手を広げながらやなぎんが苦笑い気味に仲介に入る。
「まだメロディーもついてない段階じゃどっちにしろなんとも言えないからさ、落ち着けって」
¨ジェントルマンやなぎん¨
この前日吉さんがやなぎんをそう言ってたのを思い出す。
ジェントルマンって
紳士って意味だっけ。
やなぎんが紳士かどうかはよくわかんないけど
いつもこうして仲介に入るのはやなぎんだ。
名目上、俺達のバンドのリーダーはバンドを作った張本人の亮介だけど
実際、やなぎんがいなかったらとっくに崩壊してると思う。
俺もだけど、皆好き勝手言うし、やるし、趣味も好みもバラバラだし
そんな中、揉め事もなくこうやってトントンと進んでくのはやなぎんのおかげ。
綺麗にまとめて
うまく意見を組み合わせてくれる。
ちょっと常識外れの濃いメンバーの中で唯一の常識人だ。
「確かにな~、この段階であれこれ言ってもしゃーねーから、とりあえずこの話はメロディー付いてからにしようぜ!!」
単純な亮介は、ころっと簡単に転がる。
それに溜め息をつきながら俺もとりあえず頷いた。
