隣の席の室井くん①



「大体よ~コードもねぇ、ドラムのリズムとイッチーの鼻歌だけでよくここまで曲が完成したよマジで!!」

「ドラム以外のことはよくわからない」


イッチーが無表情のまま呟く。

イッチーは、曲を作ってくる時はいつもドラムのリズムと大雑把なメロディーしか作ってこない。


普段無口で無表情のイッチーが、鼻歌交じりにドラムを叩く姿はなんとも言えない。


それに俺らパートごとに
コードとかアレンジとか加えながら曲にしていく。



そんなイッチーの作る曲は
無口で無愛想なイッチーらしい、ヘビーでダークな感じが多い。


なんかデストロイヤー、って感じ。



「まぁ、大体のコードとメロディーもついたしあとはそれぞれアレンジ加えればいいだろ」


やなぎんがそう言えば
皆が頷いた。


でも、ライブでやると
すごく盛り上がるのが不思議。




「あ、そーだ!!やなぎん!!コレのギターソロ、ようやく弾けるよーになったぜ!」



亮介が次に手に取ったのはやなぎんが書いてきた曲。


「やなぎんよくこーゆーメロディー浮かぶよなぁ」


亮介が感心したように声を上げるのに俺も頷く。


やなぎんの作ってくる曲はメロディアスな曲が多い。
なんていうか、すんごくドラマチックな感じ。


俺らじゃ多分こういうメロディーは思いつかない。


それに、ギターもベースもメロディーも、完成度の高いものを持ってくる。


普通、アマチュアの高校生にこんなの作れないと思う。


「ここのコード展開とか超苦労したんだぜ!!?」


亮介の言う通り
やなぎんの作る曲は難しい。


メロディ関しても
この拍のちょっと前からサビで~とか、ここはもうちょっと歪んで歌う~とか、細かいとこまで作ってくる。


歌うのも大変。



「ライブまでに覚えられるかな」

「それよか、早く歌詞書けよ歌詞!!」



・・・それが出来ないから
こんなに大変なのに。



俺一人、曲を作れないからその変わり、歌詞は全部俺が書くことになってる。


国語なんていつも赤点の俺に歌詞を任せるなんて
どうかと思う・・・



「まぁ、まだ日にちあるからゆっくり書けよ」


やなぎんが優しく笑いながら俺の頭に手を置いた。


やなぎんって
お兄ちゃんみたいだ。

お兄ちゃんなんかいたことないからわかんないけど。

ヒゲ面で、見た目は厳ついのにメンバーの中で1番大人だ。




「で?亮介の持ってきた新曲は?」


やなぎんの言葉に
待ってましたとばかりにニヤリと笑った亮介が
出来立てホヤホヤのスコアをテーブルに広げた。


「いや~!!マジで今回は自信作!!」


・・・なんだかすごい
イヤな予感。


怯みながらも
亮介の広げたスコアを俺たちは覗き込んだ。