「大体よ~コードもねぇ、ドラムのリズムとイッチーの鼻歌だけでよくここまで曲が完成したよマジで!!」
「ドラム以外のことはよくわからない」
イッチーが無表情のまま呟く。
イッチーは、曲を作ってくる時はいつもドラムのリズムと大雑把なメロディーしか作ってこない。
普段無口で無表情のイッチーが、鼻歌交じりにドラムを叩く姿はなんとも言えない。
それに俺らパートごとに
コードとかアレンジとか加えながら曲にしていく。
そんなイッチーの作る曲は
無口で無愛想なイッチーらしい、ヘビーでダークな感じが多い。
なんかデストロイヤー、って感じ。
「まぁ、大体のコードとメロディーもついたしあとはそれぞれアレンジ加えればいいだろ」
やなぎんがそう言えば
皆が頷いた。
でも、ライブでやると
すごく盛り上がるのが不思議。
「あ、そーだ!!やなぎん!!コレのギターソロ、ようやく弾けるよーになったぜ!」
亮介が次に手に取ったのはやなぎんが書いてきた曲。
「やなぎんよくこーゆーメロディー浮かぶよなぁ」
亮介が感心したように声を上げるのに俺も頷く。
やなぎんの作ってくる曲はメロディアスな曲が多い。
なんていうか、すんごくドラマチックな感じ。
俺らじゃ多分こういうメロディーは思いつかない。
それに、ギターもベースもメロディーも、完成度の高いものを持ってくる。
普通、アマチュアの高校生にこんなの作れないと思う。
「ここのコード展開とか超苦労したんだぜ!!?」
亮介の言う通り
やなぎんの作る曲は難しい。
メロディ関しても
この拍のちょっと前からサビで~とか、ここはもうちょっと歪んで歌う~とか、細かいとこまで作ってくる。
歌うのも大変。
「ライブまでに覚えられるかな」
「それよか、早く歌詞書けよ歌詞!!」
・・・それが出来ないから
こんなに大変なのに。
俺一人、曲を作れないからその変わり、歌詞は全部俺が書くことになってる。
国語なんていつも赤点の俺に歌詞を任せるなんて
どうかと思う・・・
「まぁ、まだ日にちあるからゆっくり書けよ」
やなぎんが優しく笑いながら俺の頭に手を置いた。
やなぎんって
お兄ちゃんみたいだ。
お兄ちゃんなんかいたことないからわかんないけど。
ヒゲ面で、見た目は厳ついのにメンバーの中で1番大人だ。
「で?亮介の持ってきた新曲は?」
やなぎんの言葉に
待ってましたとばかりにニヤリと笑った亮介が
出来立てホヤホヤのスコアをテーブルに広げた。
「いや~!!マジで今回は自信作!!」
・・・なんだかすごい
イヤな予感。
怯みながらも
亮介の広げたスコアを俺たちは覗き込んだ。
