隣の席の室井くん①




今度10月に、俺らの初めてのワンマンライブをやることになった。


今まで対バンばっかりだったから、SnakeFootだけっていうのは初めて。


割とお客さん集めるだけの知名度はあるみたいなんだけど、それをやるのは俺がずっと拒んでた。



理由は、



「それまでにお前、体力つけとけよ~!!ボーカルが途中でぶっ倒れたらシャレんなんねぇかんな!!」



ヒャヒャヒャと笑いながら亮介が言う
その言葉通り。



だって、普段滅多に運動なんかしないし(そもそも苦手だし)


大きな声も出さないし。


ライブで思いっきり声張り上げるの、体力すんごく使う。



「・・・自信ないなぁ」



はぁ、とため息をつきながら椅子に寄り掛かった。



「MC挟みながらやるからさ、翔に無理のないよう」



やなぎんが優しく声を掛けてくれる。



「あっめ~よ!!やなぎん!!コイツの軟弱さは異常だよ異常!!お前なぁ、そんなんだと日吉チャンに愛想尽かされるかんな~」

「・・・亮介なんか死ねばいいのに」



本当、コイツは
昔からうるさい。



狭いスタジオの真ん中で
4人で集まり、それぞれがテーブルを囲む。



今までも何回かやったことのある曲と新曲3曲、
そして今日新たに亮介が持ってきた新曲のスコアが並ぶ。


他のバンドがどうかは知らないけど

俺たちのバンドは
基本的に全員が曲を書ける。(俺以外)


それって結構稀なことで

たいていはバンドの中に一人はサウンドメーカーがいて、曲数を増やしていくパターンが多いって前にやなぎんが言ってた。



でもSnakeFootには
曲を書ける人が3人もいるから

割と色んなタイプの曲が集まる。



皆それぞれ性格が出てて
作ってくる曲も色々だし

曲の作り方も色々。



「まずよ~、イッチーのこの曲だけど~」


亮介がイッチーがこの前持ってきた新曲のスコアを指差しながら進行を勤める。



「あいっかわらずイッチーの作る曲はどんよりしてるよなぁ!!」


ヒャヒャヒャと笑いながら手にしたスコアには、簡単なコード進行とドラムのリズムが書かれている。


そこには俺らが書き足したあとが
ごちゃごちゃと黒くうごめいている。