隣の席の室井くん①




目の前に映る、室井くんの白く綺麗な鎖骨。

ほんのり香る室井くんの匂い。


「ありがとう、日吉さん」


耳元で掠れた室井くんの声が響き、アタシは身を固くする。



「今日は我慢しようと思ったんだけどなぁ」

「が、がが我慢?」

「うん、だって、いつも日吉さんビックリさせちゃうから」



今も非常にビックリしてますけども!!
この状況にものすごくビックリしてますけども!!



「日吉さん」

「ははは、はい!!」

「日吉さん、好き」

「・・・」

「日吉さんを好きになれて嬉しい」

「・・・」

「日吉さんが俺を好きになってくれたのが嬉しい」

「ア、アタシも!!」



室井くんの薄い胸板を少しだけ押し、見上げる。



「嬉しい!室井くんを好きになれて、室井くんが好きって言ってくれて嬉しい!!」


勇気を振り絞ってそう答えれば



ほら、君は嬉しそうに笑うから



恥ずかしいけど、とんでもなく照れるけど
今にも爆発しそうだけど!!



それでも

ふわーんと、のほーんと
ひょろろーんと


けれど

ストレートで真っすぐで、無邪気で素直な君に
伝えたいって思う。

それしかアタシに出来ることが見つからないんだ。



再び、閉じ込められた室井くんの腕の中。

室井くんの少し早い心音を耳元に
そして花火の音と観客の歓声をBGMに


アタシはそっと目を閉じる。


「・・・室井くん」

「うん?」

「花火終わっちゃうよ?」

「うん」

「見なくていいの?人生初の花火」

「うん、でももうちょっと」

「・・・」

「日吉さん」

「はい」

「早速ワガママ言ってもいい?」

「うん?」

「ちゅーしていい?」

「!!!!?」

「だって突然すると日吉さんビックリしちゃうから。聞いてみた」

「・・・室井くん」

「うん?」

「それは、ワガママとは言いません」





ーー花火と祭りと人の声


浴衣に、お面に、ちょんまげ頭



片手で眼鏡を外した室井くんが


優しくアタシに、キスをした。










* * * *




「ちょっとアンタら!!一体どこうろついてたのよ!!」

「ひいぃぃ!!ごめんなさい!!」

「うっかり人混みで酸欠で救急車に乗せられてんじゃないかって心配してたんだかんね!!!!一言くらい連絡しなさいよ!!」

「ごめんって!!!!」



後に再び合流した
さっちゃんに死ぬほど説教を喰らった。


恐い。恐すぎる。



「ヒャヒャヒャヒャヒャ!!まぁまぁさっちゃん、い~じゃねぇのよ!!翔も日吉チャンと二人っきりのがよかったんじゃね?」


相沢くんが、高笑いしながらさっちゃんを宥めてくれるも


「おかげでこっちはいい迷惑だったけどね!!」


と、怒り収まらずのさっちゃんの鋭い視線が室井くんに向く。


「ところで室井。アンタなんでそんなに嬉しそうなのよ」

「うん?」



さっちゃんの般若のような視線を浴びながらもニコニコ顔の室井くん。

ご機嫌に、キタローお面が後頭部で揺れる。



「さては、あんたら二人コソコソとちちくり合ってたでしょ」

「ち!!ちちくり・・・ッッ!!」

「ひゅ~♪やるねやるねお二人さん~!!野外プレーだなんてなかなかアグレッシブだな翔!!」

「人がアンタの相方の面倒みてやってた間に呑気なもんね~まったく!」

「ぎゃははは!!!」




ほんと、うるさいこの二人





ーーーこうして


室井くんとの初花火大会はなんとか無事に幕を閉じたのであった。