隣の席の室井くん①



その白い手を見つめながらアタシは固まる。


「日吉さん?」


ヤメテください。
首を傾げないでください。見つめないでください。


「手・・・繋ぐんですか?」


激しくきょどりながらアタシは室井くんを見上げる。


「だめ?」

「だめじゃない!!・・・けど恥ずかしいとゆーか、なんとゆーか・・・」


ゴニョゴニョと濁すアタシ。
だって、人前で手なんか繋いだことないもの。
しかも、こんな最強無敵バージョン室井と手なんか繋いだら今日こそアタシは破裂死するに違いない。


「ん~、そっか」


頭を傾げながら室井くんはそう呟いたものの


「でも、だめ」


と、真顔で言った。


「だめ?」

「うん、だめ」



何がダメなんですか。
基本的に室井くんの言葉には主語が足りないんだよ。
頭を傾げるアタシに


「だって迷子になっちゃうよ?だから、恥ずかしくてもだめ」



真顔を崩しニッコリ笑うと、室井くんはアタシの手を握り歩き出した。



「むむむ室井くん!!?」

「大丈夫!今度はぶつからないように頑張るよ俺」


いや、そんな急にキリっとされても!!
使命感に燃える番犬みたいな顔してるよ


ーーーっていうかね、
なんですか!!この人は本当になんですか!!


さっきまで青白い顔して
ヒョロヒョロ、よれよれしてたのに
なんでこんなに突然強気になるんですかね!!?


「む、室井くん、どこに向かってるの!!?」


さっきまで人混みにまみれぶつかりまくっていた室井くんは、今度はゆっくりとした歩調でゆるゆると人を避けて行く。


・・・というより
さっきより少しキリッとした室井くんを
皆が避けているように見える。

老若男女問わず室井くんを振り返っていく。


すげぇな。

無敵バージョン室井



ーーーーーー
ーーーー
ーー


「うわぁ~、凄い穴場じゃん!!」



室井くんに手を引かれ
ゆるりゆるりと人混みを掻き分けてたどり着いたのは

少し高台になっている神社の後ろ。

斜め下に、さっき室井くんたちと待ち合わせした赤い鳥居がチラリと見える。


「さっちゃんたちも此処に来るのかな」

「ん~、多分方向的に違うと思うよ」


よいしょ、と呟きながら古びたベンチに腰を下ろすと、室井くんはのんびりと答えた。

しかし、本当に穴場だな。
アタシたち以外にほとんど人がいない。


「多分こっからなら、花火見えると思うんだ」


高台から見下ろす景色はやっぱり人混みで
ウジャウジャと行き交う人達がまるで蟻のようにひしめき合っている。

メイン通りからそんなに離れた場所じゃないのに
打って変わって、この場所は静かだ。

確かに、この場所なら
方向的にも花火がよく見えると思う。


「さっちゃんたち、大丈夫かな」


アタシがそう呟いた丁度その時、



~♪



巾着の中に入っているアタシの携帯が、プルルルルルとオーソドックスな着信音を響かせた。



「わわわ、多分さっちゃんだ」


アタシが、巾着から取り出そうともたもたしていると
携帯はその着信音を止める。