隣の席の室井くん①



眼鏡越しじゃない室井くんの、大きな瞳が真っすぐにイカツイ坊主に向かう。


・・・か、かっこいいじゃないですか!!!!


室井くんに真っすぐ見つめられたイカツイ坊主は


「べ、別に、わかりゃーいいんだよ」


と、呟いた。



しかも真っ赤な顔で


「ありがとうございます」


ニッコリ笑った室井くんにさらに真っ赤になった坊主は


「じゃ、じゃあな!!」


と、その場を去り人混みに消えて行った。


恐るべし、室井くん
まさかのメンズさえ赤面させるんですかこの人は。
あんなイカツイ兄さんまでも魅了するんですか
このスマイルは。



「はー、恐かったね~」


そんな室井くんは
呑気に笑いながら、アタシを見る。


「大丈夫?日吉さん」

「・・・うん、ありがとう室井くん」



・・・複雑だぜ。

室井くんは、手にしていた眼鏡を再び装着する。


「なんで眼鏡外したの?」

「うん?いや、さすがに恐かったから、眼鏡外せば見えないし、半減するかなと思って」




どうだろうソレは。



「あれ、亮介たち見失っちゃったねぇ」



人混みの真ん中で、室井くんがまた呑気に呟く。


「あぁ!!ゴメンね!!アタシがぼさっとしてるから!!」


イカツイ坊主との戦いですっかり相沢くんとさっちゃんを見失ってしまった。

焦るアタシを見下ろしながら室井くんはニッコリ笑って「うん?なんで謝るの?」と、首を傾げる。


「なんでって・・・だってはぐれちゃったよ?」


アタシも首を傾げる。


だってこれじゃあ完全に迷子だ。
花火の時間にも間に合わなくなっちゃう。


「ん~」


首の後ろにかかったケケケのキタローお面のゴムを触りながら室井くんは


「松坂さんには悪いけど・・・俺は嬉しいよ?日吉さんと二人の方が」


と、眼鏡の奥の瞳を細めてそう言った。



「む、む、室井くん!!」

「ん?」

「その姿でそんなコト言うのはもう犯罪の域だと思う!!!!」

「うん?」



ダメだ!!この人!!
普段より、悩殺率が8割増になっている!!


浴衣とキタローお面
そして水玉シュシュのちょんまげ3セットの室井くんは、まさに今無敵の悩殺ボーイと化している!!


「とりあえず、行こう?」


無敵バージョン室井が、低い甘いトーンで言葉を落としながらアタシに向けてその白い手を差し出した。