隣の席の室井くん①




ーーーそんなこんなで。


ようやく再びアタシたちは人混みの中を歩き出した。



「とりあえずさぁ、花火始まっちまうからよ~場所取り行こうぜ」

「それなら、あっちの高台に穴場があるのよ」


そんな相沢くんとさっちゃんの先導でアタシたちは人混みを掻き分けながら前に進む。



「ねぇ、ちょっと。あの人格好よくない?」

「どれどれ?うわ!!マジだ!!格好イイ!!」



背後からのヒソヒソ声に振り向けば

浴衣姿の女の子たちが、ちょんまげ姿の室井くんをチラチラ見ながら囁いている。


アタシは思わず室井くんを見上げた。


「ん?」


視線に気付いた室井くんがアタシを見てにっこりと笑う。


室井くんは、眼鏡を外しそれを掲げて覗き込みながら
「さっき落としたからかなぁ、フレームが歪んでる」
と、少し困ったように頭を傾げている。



・・・さっちゃんのバカ。



眼鏡を外し、ちょんまげ姿の室井くんは
どこからどう見てもスーパーイケメンで。

いや、むしろ
イケメンなんて陳腐な言葉で表すのが
逆に申し訳なくなるくらいのレベルである。


ただでさえ浴衣姿で色気アップしてるのに
前髪も眼鏡もなくなっちゃったらもう色気どころの騒ぎじゃない。


すれ違う女の子たちがここぞとばかりに室井くんを振り返る。


「どうしたの?日吉さん」


室井くんが喋るたびに赤い水玉シュシュが揺れ
その下で大きな黒い瞳が光る。


目と眉の位置が近いからなのか
それとも色が白いからなのか


決して濃い顔なわけじゃないのに
室井くんは、どこか日本人離れした中性的な顔立ちをしている。


白い首から伸びる鎖骨はとても綺麗で
首の後ろで揺れているキタローのお面ですらお茶目に見えるという不思議。


「・・・なんかヤかも」

「・・・?」



ふてくされたアタシの顔を
室井くんが不思議そうに見ていた。



なんかさ、


確かに室井くんはかっこいい。
かっこいいっていうか、綺麗って言葉のがしっくりくる。


男の子に綺麗なんておかしいのかもしれないけど

コレでもっと髪が長くて化粧なんかしたら
完全に女の人に見えると思う。


だから、こうして皆が振り返るのも当たり前なんだけどさ


やっぱりなんか
ちょっと嫌だ、と思ってしまう。



「室井くん」

「ん?」

「・・・とりあえず眼鏡をかけてください」

「うん?でもね、ずれ落ちてきちゃう」

「ずれ落ちてもいいから」



ないより、あったほうがまだ少しでも顔が隠れて安心する。


不思議そうにアタシを見なが笑いながら眼鏡を装着した。そんなスマイルO円の室井くんを、やっぱり皆が振り返る。



「室井くん」

「なぁに?」

「・・・やっぱり、そのキタローお面被ってみない?」

「え、やだよ」



うん。だよね。