「あ~、眼鏡」
眼鏡を落としたらしい室井くんは、地面にはいつくばりながら手探りに眼鏡を探す。
「いってぇよ翔!!お前の髪の毛が目に入った!!」
「知らないよ、そんなの。それより亮介眼鏡拾って」
「あぁん!!?お前の眼鏡より俺の目のが一大事だよ!!」
「亮介の目より、眼鏡のが大事」
「ひでぇな!お前は!!大体なんでお前んなに髪なげーんだよ!いい加減切れよ!!暗いよ!陰気だよ!!」
「うるさいなー」
・・・何をこの人混みのド真ん中で喧嘩してるんだろうかこの二人は。もの凄くハタ迷惑だ。通行の妨げだ。
「あ、あった」
ようやく眼鏡を見つけたらしい室井くんが、のそりと立ち上がる。
「よかった、無事だ~」
「オイオイオイ!!俺の目が無事じゃねーの!!」
またギャーギャーと喚く相沢くんに、室井くんはうっとおしそうな眼差しを向けながら眼鏡を装着する。
「切れ!!髪を切っちまえ!!・・・・・・っぶ、」
相沢くんが吹き出した。
・・・ので、その視線を追うと
無表情で、両手で髪の毛を掴みツインテールのように括った状態の室井くん。
・・・なんですか
その、コレでいいんだろ!!文句あっか!!
みたいな顔。
「何をしてんのよ、あんたらは」
そんな室井くんを見て
さっちゃんがため息をついた。
「室井も、それは違うと思うわ」
さっちゃんの言葉に、ツインテール室井は頭をコテンと傾げる。
首にキタローをぶら下げて。
「純、アンタのキュンポイントがわからない」
頬を赤らめるアタシを見て
さっちゃんが更なるため息をついた。
「ちょっと室井」
さっちゃんは、おもむろに室井くんに近付くと
「わわわ、松坂さん!?」
室井くんの前髪を掴み上げる。
「わーーー!?さっちゃん!?」
慌てて止めに入るアタシに
「何よ、別に取って食いやしないわよ」
と、さっちゃんが呟き
自分の手首にしていた赤い水玉のシュシュで室井くんの前髪を手際よく縛りあげた。
「・・・松坂さん」
「なによ室井」
すごく困った顔の室井くんの頭には、可愛い水玉模様のシュシュで縛られたちょんまげ。
「大体暑苦しいのよアンタの髪!折角浴衣着てる時くらい勿体ぶってないでだしなさいよ顔を!!!」
「・・・はい」
やはし、セクシー隊長さっちゃんに逆らえる人間はいないのか
さすがの室井くんもそれ以上反抗せずに
とても複雑そうな顔でそのちょんまげを受け入れた。
