隣の席の室井くん①



神社前の通りは、お祭りのメイン通りになっていて所狭しと屋台が並び、あちこちからいい匂いが漂ってくる。


祭特有の提灯のオレンジの明かりや
お囃子の音


浴衣姿の親子連れに、カップル、大人から子供まで
攻めぎ合うように道に広がっている。



「あ!!あれやろーぜ!!あれ!!金魚すくい!!」

「すくった金魚どうすんのよ」

「生物室かどっかに寄付すりゃよくね!!?」

「アンタみたいな奴に金魚すくいやる資格ないわよ」


アタシたちの横でそんな会話をしてる相沢&さっちゃん。


その横では


「室井くん、大丈夫?」

「・・なんとか」


そんな会話のアタシたち。


ただ道を歩くだけなのに、なんでこんな満員電車みたいな状態になるのか。


すでに室井くんなんか
人にまみれすぎて青白くなっちゃってるよ。


なんとか人波をくぐり抜けながらヨタヨタと歩くアタシと室井くんは、ゲッソリだ。



「あ!翔!!あれ見ろよあれ!!」


相沢くんが指指したのは
お面が並ぶ屋台。



子供に人気のナントカレンジャーやナントカライダー
はたまた変身ものの美少女キャラクターや
なんちゃってディズニーみたいなキャラクターまでもが店先に並べられている。


「ぎゃははは!!翔がいるーーー!!」


相沢くんが笑いながら指した先には


丸い片目がトレードマークのキャラクター。

目玉が親父の彼。


「あれ買ってやろーか!!?」

「・・・いらないよ」

「まぁまぁまぁ!!遠慮すんなって!!」



相沢くんは、室井くんの腕を掴むと一目散にその屋台に向かって行った。



「なんであんなに無駄に元気なのかしらアイツは」


うんざり、とした様子で呟くさっちゃんの言葉にアタシも頷く。



室井くんに、相沢くん。
まさに正反対の組み合わせだ。



残されたアタシたちは、去って行った彼らを見送りながらため息をついた。


「しかし目立つね相沢くん」


人波の向こうで派手な金髪がご機嫌に揺れながら屋台のおじさんと会話をしているのが見える。

時折、ぎゃははと笑い声を発しながら。


「・・・恥ずかしいったらないわ」


そういいつつさっちゃんの視線は相沢くんを追っているのを見て、思わずにんまりとしてしまう。


「なに、その顔」

「いやいや青春だな~と思いましてね」

「・・・なにがよ」



相沢くんを毛嫌いしてるように見えるけど
なんだかんだでこうして花火大会に来ちゃってる辺り意外とまんざらでもないんじゃないのかな。


まぁ、さっちゃんと相沢くんの問題だから下手げなことは言えないけれど


うまく行くといいね
相沢くん。




「あ、戻ってきた」


さっちゃんの言葉に
アタシも視線を戻すと



「ぎゃはははは!!!!ヒャー!!ハッハッハッハ!!!!」


大笑いの相沢くんと


「・・・」


無言でしかめ面の室井くん。



「・・・っぶ」


さっちゃんが吹き出した。

アタシも思わず笑いをこらえる。



「見て見てコレ!!キタローOn the キタロー!」



室井くんの頭の上には例の片目のキャラクター
ケケケのキタローがちょこんと乗っていた。



「・・・日吉さんまで笑う~」


じっとりとした目を向けながら室井くんが弱々しい声で訴える。


「いや・・・だ、だって」


そりゃ笑うでしょ。
キタローヘアーの室井くんの頭にリアルキタローが乗ってるんだよ?

しかめ面の室井くんと打って変わって彼の頭上のリアルキタローがニッコリ笑顔なのが尚も笑いを誘う。


夢の共演だねこりゃ。



「もう~、いらないってこんなの」

「あぁ~!!なんでとんだよ!!折角買ってやったのに!!」

「勝手に買ったくせに」

「じゃあせめて首にしろよ首に!!」


室井くんの手からソレを取り上げると、相沢くんは
再びゴムを室井くんの頭に通し、キタローを首の後ろに回した。


「前から見ても、後ろから見てもキタロー!!ぎゃはははは!!ウケる!!超ウケる!!」


またしても、相沢くんが爆笑するもんだから


「・・・」


室井くんはすっかりご機嫌ナナメだ。



「変じゃないよ?むしろすごく似合ってる」

「あんま嬉しくないよ日吉さん・・・」



あれ?フォローのつもりだったんですけどね。

さらに室井くんは暗い顔になってしまった。



「ーーうわ」

「だぁっ!!」



後ろから来た人波に押され室井くんが前のめりによろけた。


その拍子に、正面にいた相沢くんにぶつかり二人がほぼ同時につんのめった。