相沢くんに数秒遅れて
「・・・亮介、速い」
背後から、聞き慣れた心地好い声が聞こえアタシは振り向いた。
「だ~ってお前歩くの遅いんだもん!!」
「亮介が速いんだよ」
ゼーゼー肩で息をしながら既にげっそりとした顔で現れた室井くんにアタシは目を丸くする。
「あ、日吉さん」
アタシに気付いた室井くんが、そう呟いたきり硬直した。
アタシも室井くんを見て、同じく硬直する。
「室井くん、その格好・・・!!」
思わず鼻を抑える。
今なら間違いなく鮮やかな鼻血を噴出できること間違いない。
だだだ、だって!!
浴衣って!!
相沢くんは分かるけど
まさか室井くんが浴衣って!!!!
髪型はいつものように長く顔にかかり、その奥では黒ブチの眼鏡が光っているものの
薄いグレーのシンプルな浴衣を着た室井くんは、やたらとセクシーだった。
ヒョロリと細長い体に、緩く着こなした浴衣。
首元から見える白い首に綺麗な鎖骨。
「ぎゃはは!!!!なぁに二人して見とれあってんだよ!!」
「ほんとよ、言葉も出ない程お互い惚れ直しちゃってるわけ?」
「い~ね!!い~ね!!若いってい~ね!!」
「青春ね~」
室井くんの浴衣はさておき
なんとなく予想はしてたが、どうしよう。
想像以上にこの組み合わせタチが悪い。
ようやく、のそりと動きだした室井くんは
ゆっくりとアタシの方に近付いてくる。
ぴたり、目の前で足を止めると
「ゴメンね、待たせちゃって」
と、ふにゃりと笑顔を見せる。
「いやいや、アタシたちも今来たところ」
「びっくりした、日吉さん浴衣だったから」
「アタシこそびっくりしたよ。まさか室井くんが浴衣着てくると思わなかったから」
「・・・亮介に無理矢理着せられたんだよ」
どうやらアタシと全く同じ経緯で連れて来られたらしい。
室井くんは、長い前髪を少しだけ掻き分けてその間からアタシを眼鏡越しに捕らえると
「日吉さん、可愛い」
と、へへ、と笑った。
それにカーっと顔が熱くなりながらも
「いやいやいや、室井くんこそよく似合っててびっくりしたよ!鼻血モンだよ!」
アタシもそう伝える。
人混みの中で見つめ合いながらお互い赤い顔をして向き合うアタシたちに
「なになに?二人して真っ赤に頬染めちゃって!!」
「イチャイチャすんなら他でやってくんないかしら」
ほっとけ。
