隣の席の室井くん①




        * * *




夕方6時半前。


アタシとさっちゃんは
隣町の駅から数分の所にある神社の赤い鳥居の前で
室井くんと相沢くんを待つ。



「うお、見ろよ、超イイ女」


通りすぎゆく男共が、黒い浴衣のセクシー隊長さっちゃんを振り返っていく。


そーだろ、そーだろ。
さすがセクシー隊長。


振り返りたくなる気持ちわかるよ男子諸君。
アタシも親友として鼻が高い。


・・・ちょっと虚しいけども



「それにしてもすごい人ね~」



さっちゃんが眉間にシワを寄せながら呟いた。

人のことを無理矢理引きずってきたクセに、そんなさっちゃんはアタシ以上にこの人混みにイラついているご様子。


さっきなんか、電車の中で足を踏んできたイカツイ兄ちゃんに「いったいわよ!」と、ヤンキーよろしくなガンを飛ばしていた。


イカツイ兄ちゃんが「すいません」とさっちゃんに謝罪したのを見て、なにがあってもアタシはこの子を敵に回すまいと誓った。


「こんな人混みで見つかるかしらアイツら」


確かに。
こんだけ人がいたら室井くんたちに会うだけでも一苦労しそうだーーー、なんて丁度考えていた時だった、


「ヒャー!!!ハッハッハッハ翔!!おっ前、ゾンビみてぇだぞ!!ゾンビ!!ぎゃはは!!」



人混みのどこからか聞き慣れた引き笑いが聞こえてきた。

・・・数秒前の心配なんて
とてつもなく無駄だったらしい。

その声は、この人混みの中響き渡っている。


背伸びをして笑い声の出所を探すも、どうにも見当たらない。


姿は見えないのに「ぎゃははは!!」という笑い声だけは人混みの中から聞こえてくる。


・・・なんかもう恐ろしいよ、逆に。



「ひーひー!ぎゃははは!」


尚も聞こえる笑い声。


「・・・」

「・・・」

「あの声を頼りにすれば、砂漠にいても方向を見失わない気がするよ」

「・・・はぁ」



さっちゃんが、深くため息をついた。


ワラワラ、わさわさと押し寄せてくる人混みの中からようやくよく目立つ金髪頭が見えた。


その横には長い黒髪。



「あ!!いたいた!!」



金髪はアタシたちを視界に入れると、人混みの中から駆け出す。それに引きずられるように横の黒髪が頼りなく揺れた。



「ゴメンな~!!遅くなって・・・って!!うおぅ!!浴衣!!二人とも超可愛いじゃんかよ!!」



身軽に人混みから脱出してきた相沢くんが、落ち着きなく身振り大きく登場したかと思うと、目を丸くしてアタシたちに駆け寄ってきた。


濃いブルーのストライプの浴衣を着た相沢くんは
嬉しそうにさっちゃんに飛び付く。


「あっついわねアンタは!!うざい!!離れて!!」

「いや~ん、つれない!!さっちゃん、浴衣可愛い!!超似合ってる!!」

「・・・知ってるわよ!!そんなこと!!当たり前じゃない!!」


うざいと言いながらもまんざらでもなさそうに少しだけ顔を赤らめるさっちゃん。


こうして見るとお似合いだな~この二人。
言うまでもなくさっちゃんは美少女だし
相沢くんも、その見た目も相まって人目をつく。


浴衣の濃いブルーが金髪に映えてよく似合っている。