隣の席の室井くん①



* * *





「ちょ、ちょ、苦し・・・」

「我慢しなさいよ」

「いやいや、出るっっ!なんか出ちゃいけないものが出ちゃうから!!」

「出しちまいな、いっそのこと!」

「オイ!!・・・ぐぇっっ!!」





夏休み開始から、2週間程。
アタシは今現在、さっちゃんに締められている。


・・・帯を。



「おら、出来たわよ!上出来上出来!!」


腕を組みながら満足そうにニヤリと笑うさっちゃんは
黒地に大きな蝶の柄の粋な浴衣を纏い、頭も色っぽくアップにして、浴衣の柄とお揃いの蝶モチーフの簪をつけている。



なんとも美しい。




それに比べ



「・・・やっぱいいよ、アタシは」

「アンタ!!着付けした私の苦労を無駄にしよーっての!!?」

「ひぃぃぃ!!ご、ご、ごめんなさい!!」



だって!!こんなセクシー隊長の横に並んだら、ただでさえチンチクリンなアタシが、更にチンチクリンでしょーが!!



「似合ってるわよ、ソレ。純っぽいわね」



浴衣なんか持っていないアタシは、さっちゃんのお古の浴衣を拝借したわけで。


爽やかなグリーン地に渋めの色で描かれた大きな花。

浴衣は可愛いけどさ、それを着たところでアタシが可愛くなるかっつったらまた別の話じゃんよ。



「それならきっと室井もうっとり惚れ直すわよ」

「・・・本当に室井くん、くんの?」

「大丈夫よ、今頃相沢が捕獲しに行ってるハズだから」


・・・捕獲って。


あの人混み嫌いの室井くんが、花火大会なんかくるのだろうか。



・・・そもそも突然すぎるんだって。



それは数時間前ーーーーーーーーーーー
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~♪



テーブルの上に放置していた携帯が、プルルルルルとなんとも飾り気のない着信音を発した。


相手はさっちゃん。



「はいはい~、日吉でございま~す」

「アンタはサザエさんか」



開口一番にツッコむとか
さっちゃんはツッコミ上手である。




「アンタ今日何してんの?」

「え~?今日?ただ今絶賛へべれけ中ですけど何か?」

「・・・アンタそれでも花の女子高生なワケ?」


花の女子高生ですけど何か?



「夏休み中、室井とは会ってるの?」

「会ってますよ~毎日。なんせ補習組なんでね」

「・・・アンタらみたいのを正真正銘バカップルっていうのね」



えぇ。
どーせアタシも室井くんも赤点組ですから。


さっちゃんは分かるとしてあの金髪能天気野郎の相沢くんまでもが補習組じゃないとか、なんか納得いかんよ。アタシャ。



「さっちゃん、試合はどうだったの?」

「あ~ん?地区予選なんて楽勝よ楽勝!本番は県大会だからね!!」

「おぉ、さすがスーパー美少女」

「そんなことより!!デートの一つでもしなさいよ」


そんなことってアンタ。
アタシにとっちゃ親友の最後の大会の結果も一大事ですよ。


友達心のわからんヤツめ。