「それよりも、室井くん大丈夫なの?」
「え?なにが?」
「なにがって、バンド!ボーカルやってるのペロリと言っちゃってたケド!!」
なに、呑気にのほんとしてるんですかこの人は!!
クラスメートや、バンドのファンですら知らないようなトップシークレットを簡単に喋っちゃったじゃないですか!!
「あ~、うん、大丈夫」
ニコニコ笑いながらなんでもない風に答える室井くん。
「でも、」
「だって」
慌てるアタシを、室井くんが遮る。
「日吉さんのお母さんとかお兄さんに嘘つきたくないもん」
ほわん、と笑いながらそう言う室井くんに
アタシは目を丸くする。
「俺ね、最近少しだけ自信が持てるようになったんだ」
「自信?」
「うん」
室井くんは寄り掛かっていたベッドから背を離し、少し恥ずかしそうに分けられた前髪を触る。
「俺、自分のことあんまり好きじゃないから」
困ったような、言いにくいような顔でそんなことを言う。
「歌うのは嫌いじゃないし、誰かに必要とされるのも嬉しいんだけど」
ゆっくりと、ゆっくりと
室井くんが言葉を紡ぐ。
「でもね、歌っててもいつもどこか自分じゃない気がするんだ。皆が見てるのはショウであって俺じゃないから」
「・・・」
確かに、歌ってる¨ショウ¨の時の室井くんは
まるで別人だ。
アタシだってそう思った。
「おかしいでしょ?そうしたのは自分なのに」
室井くんは、¨ショウ¨として歌うことが嫌なの?
「もちろん、不満があるわけじゃないよ。バレるのにはやっぱり抵抗あるし」
アタシの思考を読んだかのように室井くんが言葉を付け足す。
「うーん…なんていうのかな」そんな風に少し言い淀みながら室井くんは続ける。
「¨ショウ¨が先行すればするほど、¨自分¨がなくなるカンジ・・・かなぁ」
「・・・室井くん」
「あはは、そんな顔しないで」
だって、
そんな悲しいこと言うから。
バンドで歌ってる¨ショウ¨は、確かに別人みたいだけど、でも間違いなく室井くんじゃない。
そう思うのに、言葉が出ない。
簡単に、口にしちゃいけない気がして・・・
そんなアタシを見て、室井くんが穏やかに笑う。
「言ったでしょ?最近少しだけ変わったんだ」
前髪の除けられた室井くんの綺麗な顔が、柔らかく頭を傾ける。
「日吉さんのおかげだよ」
「ア、アタシ?」
それにアタシも思わず頭を傾げた。
