隣の席の室井くん①


渋々と玄関先に顔を出すと案の定、袋をぶら下げた母さんが


「はぁ~、重いったらもう」


と、ドサッと荷物を下ろして肩をポキポキ鳴らす。



うわ~・・・凄い量。何日分買い溜めたのさ。


「何ボサッとしてんのよ純。まだあるのよ荷物」

「まだあるの!!?」


嘘でしょ!!?これだけでもかなりの量なのに、その上まだあるとか嘘でしょ!!?

大体、どうやってそんな大荷物抱えて徒歩15分の道のりを歩いてきたのさ!!


「さすがに買い過ぎたわ~。丁度セールやっててね~!トイレットペーパーお一人様150円よ?買うしかないでしょ~」


は~疲れた、なんて呑気に言う母さんは玄関の向こうに視線を向ける。


「あら、遠慮しないで入って入って~」


豪快に笑いながら、手招きをする母さん。


「誰かきてるの?」

「それがね~、母さん調子に乗って買い過ぎて荷物持てなくて困ってたら¨持ちます¨なんてここまで運んでくれて~、今時珍しいわよねぇ若いのに」


なんてハタ迷惑な母!!
見知らぬ人に荷物運びをさせたというのか!!


「アンタと同じ年よ~、本当今時の子にしてはイイ子ね~」


丁度死角の位置にいてここからは見えないが、その人が「いや、ほんとに大丈夫なんで」と言っている声が微かに聞こえる。


・・・ちょっと待って。


この声どこかで・・・



アタシはサンダルを履いて玄関からヒョコリと顔を出した。




「ほら、暑いんだし入って!麦茶くらいごちそうするわよ~」

「いや、そんなつもりじゃ・・・・・・」



強引に手を引かれ困った表情を浮かべたその人は
アタシの顔を見て、ピタリと動きを停止した。



「・・・・・・あれ。日吉さん?」

「むむむ、室井くん!!!!?」



そこには、トイレットペーパーとスーパーの袋を両手に持った室井くん。



「あら、アンタ知り合いなの?」

「え、いや、うん」



スーパーフリーズしたアタシと室井くんは、お互い目を丸くして固まる。

相変わらずのもっさりしたキタローヘアーと、黒ブチ眼鏡。英字の書かれたシンプルな黒いTシャツに、ジーンズ姿。


わぁ、私服姿だわ。
とか言ってる場合でもない。


「ななななんで室井くんが!!?」

「あれ?え、え?日吉さんの家?」



表札と、母さんと、アタシを順に目で追いながら室井くんは頭を傾げた。


「なに、同じ学校の子?」


母さんがキョトンとしながら室井くんと同じように頭を傾げる。



アタシは無言のままブンブンと頭を縦に振った。