渋々と玄関先に顔を出すと案の定、袋をぶら下げた母さんが
「はぁ~、重いったらもう」
と、ドサッと荷物を下ろして肩をポキポキ鳴らす。
うわ~・・・凄い量。何日分買い溜めたのさ。
「何ボサッとしてんのよ純。まだあるのよ荷物」
「まだあるの!!?」
嘘でしょ!!?これだけでもかなりの量なのに、その上まだあるとか嘘でしょ!!?
大体、どうやってそんな大荷物抱えて徒歩15分の道のりを歩いてきたのさ!!
「さすがに買い過ぎたわ~。丁度セールやっててね~!トイレットペーパーお一人様150円よ?買うしかないでしょ~」
は~疲れた、なんて呑気に言う母さんは玄関の向こうに視線を向ける。
「あら、遠慮しないで入って入って~」
豪快に笑いながら、手招きをする母さん。
「誰かきてるの?」
「それがね~、母さん調子に乗って買い過ぎて荷物持てなくて困ってたら¨持ちます¨なんてここまで運んでくれて~、今時珍しいわよねぇ若いのに」
なんてハタ迷惑な母!!
見知らぬ人に荷物運びをさせたというのか!!
「アンタと同じ年よ~、本当今時の子にしてはイイ子ね~」
丁度死角の位置にいてここからは見えないが、その人が「いや、ほんとに大丈夫なんで」と言っている声が微かに聞こえる。
・・・ちょっと待って。
この声どこかで・・・
アタシはサンダルを履いて玄関からヒョコリと顔を出した。
「ほら、暑いんだし入って!麦茶くらいごちそうするわよ~」
「いや、そんなつもりじゃ・・・・・・」
強引に手を引かれ困った表情を浮かべたその人は
アタシの顔を見て、ピタリと動きを停止した。
「・・・・・・あれ。日吉さん?」
「むむむ、室井くん!!!!?」
そこには、トイレットペーパーとスーパーの袋を両手に持った室井くん。
「あら、アンタ知り合いなの?」
「え、いや、うん」
スーパーフリーズしたアタシと室井くんは、お互い目を丸くして固まる。
相変わらずのもっさりしたキタローヘアーと、黒ブチ眼鏡。英字の書かれたシンプルな黒いTシャツに、ジーンズ姿。
わぁ、私服姿だわ。
とか言ってる場合でもない。
「ななななんで室井くんが!!?」
「あれ?え、え?日吉さんの家?」
表札と、母さんと、アタシを順に目で追いながら室井くんは頭を傾げた。
「なに、同じ学校の子?」
母さんがキョトンとしながら室井くんと同じように頭を傾げる。
アタシは無言のままブンブンと頭を縦に振った。
