隣の席の室井くん①




「ううう、うるさいな!!」


ひぃぃぃ!!むかつく!!むかつくんですけどこの人!!
その笑みは完全にアタシを馬鹿にした笑みだ!!


「しっかし、もっさりした奴だったなぁ」


兄貴が思い出したかのように呟いた。


「・・・ほっといて」


・・・残念ながらそこは否定しようがない。

だって、確かにキタローバージョンの室井くんはもっさりしてる。


白いわ、ヒョロヒョロだわ
髪の毛は長いわで最早もっさり以外の何者でもない。


「まぁでも、お前みたいな奴の彼氏になってくれんだから相当出来た奴なんだろ-なぁ」

「うるさい黙れ」



その無駄に白い歯抜いてやろうか。
それとも真っ黒に塗り潰してやろうか。
お歯黒的なかんじに。


じっとりと睨んだアタシの視線から逃げるかのように兄貴はシラ~っと視線を逸らした。


「あ、そ~いやお前、この前のライブどうだったんだよ」

「は?ライブ?」

「SnakeFootのライブ行ったんだろ?どうだったよ!!?凄かっただろ!!?」


再び室井くんの話題にアタシは視線を泳がす。

いやいや。でも兄貴は知らないわけだしね。


「あ~・・・うん。」


ゴニョゴニョと濁しながらアタシは曖昧に頷いた。


「相沢やっぱギターうまいよなぁ。あれで高校生っつーんだから凄いよ」



・・・能天気な金髪笑い上戸ですけどね。



「ベースの奴もイイ腕してるしな」


あぁ。難しいことはわかんないけど、やなぎんも確かに評判イイって相沢くんが言ってたな。


「ドラムも安定感あるしな」


イッチーね。無表情すぎてイマイチ掴めなくて
今だにちょっと怖いんだけども。

喋んないと思って油断してると突然爆弾落としてくるしね。


「でもやっぱボーカルのショウだろ。歌も凄いし、イケメンだしな!!純も見惚れたろ~?」



・・・うん。


その人、君が今さっき

もっさりだと言った人と
同一人物ですからね。



やっぱり、まさか
アレとアレが同一人物とは思わないでしょうね。



「うん、そーだねー」



微妙に棒読み気味に答えてみる。
なんとも言えないでしょうな。


ぶおぉぉんと古い型のクーラーから風の出る音が間抜けなタイミングで鳴った。


それとほぼ同時に「ただいまー!!」と、玄関の方から聞き慣れた母さんの声と、ガサガサと恐らくスーパーの袋の音らしきものが聞こえてきた。



・・・げ。帰ってきた。
アタシの安息の時間は終わったな。


「ちょっとー!!純ー!!手伝いなさいよー!!」



ほぉれキタキタ。早速だよ・・・
人使いが荒いんだから。
大体、母さんは一度の買い物で一気に買い過ぎなんだよ。両手一杯のスーパーの袋を下げて毎回帰ってくるんだから。


面倒臭がりな母さんはマメに買い物に行くくらいなら一気買いするタイプなんだよね。



「純ーー!!」

「わぁかったよ!!今行きますーー!!」


ってか兄貴も手伝えよ。

何口笛吹きながら
俺知らな~い的な顔してんだよ。