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日吉チャンが慌ただしく去って行った教室は
一気に静かになった。
「愛しのさっちゃんの部活もそろそろ終わるかな~」
この教室の窓からじゃテニスコートは見えないけど、時間的にもそろそろなはず。
今日はバンドの練習もねぇし、一緒に帰ろうと待ち伏せ中なのだ。なかなか手強い相手だけどまたそれがソソるっつーかね。
・・・日吉チャンに話した昔話は大分端折っての内容になっちまった。
あんまり自分のことを話したりすんのが好きじゃない翔が、自分からアルバムを見せるなんて正直ビックリだし、ましてや、詳しくじゃないにしろ昔話を話すなんて思わなかった。
それくらい
翔にとって日吉チャンが特別ってことなんだろーけど。
少しずつ、翔が変わっていくのが分かる。
ギターを弾き初めてから
バンドを初めてから
日吉チャンに出会ってから
いつか翔が自分の話を全て日吉チャンに話す時が来たらもう一度、ありのままに話してあげようと思う。
「いやいや、青春ですねぇ~」
思わず、口元が緩み
けたたましく鳴く蝉の声に乗せて、鼻歌を口ずさんだ。
俺にも、早く青い春こねぇかなぁ~。
なんてな。
* * * *
「翔、最近楽しそうだな」
「ん~?そう?」
「いや、なんかいつもより生き生きしてるぞ」
「そー?」
「いや、だって鼻唄なんて滅多に歌わないだろお前・・・しかも、なんか・・・最近歌い方も変わった」
「そ~?」
・・・・・・・・・・・・
「どう思う?最近の翔。なんかやたら歌が色っぽくないか?」
「そう思う」
「イチもそう思うだろ?ありゃ絶対なんかあったぞ」
「そう思う」
・・・・・・・・・・・・
「翔~!!お前今日の休み時間なんで来なかったんだよ~!!階段とこに来いっつったじゃん!!」
「うん、ごめん亮介」
「ごめんじゃねーやい!!待ってたんだかんなー!!!!何してたんだよ~!!」
「日吉さんと喋ってた」
「日吉さん?誰それ」
「隣の席の女の子」
「へ~、めっずらしいじゃんお前が女子とお喋りなんてよ~!」
「うん、日吉さんは喋りやすい」
「ほぉ~~~?」
「今日は日吉さんがね~・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・
「・・・原因はもしかしなくてもアレか?イチ」
「・・・そう思う」
「見ろ。翔の顔が珍しく生き生きしてる」
「そう思う」
「しかも鼻唄交じりだ」
「・・・珍しい」
ーー恋するちょっと前の
とある日の
SnakeFootの会話。
