隣の席の室井くん①



ーーーーーー
ーーー

日吉チャンが慌ただしく去って行った教室は
一気に静かになった。


「愛しのさっちゃんの部活もそろそろ終わるかな~」


この教室の窓からじゃテニスコートは見えないけど、時間的にもそろそろなはず。

今日はバンドの練習もねぇし、一緒に帰ろうと待ち伏せ中なのだ。なかなか手強い相手だけどまたそれがソソるっつーかね。


・・・日吉チャンに話した昔話は大分端折っての内容になっちまった。

あんまり自分のことを話したりすんのが好きじゃない翔が、自分からアルバムを見せるなんて正直ビックリだし、ましてや、詳しくじゃないにしろ昔話を話すなんて思わなかった。



それくらい

翔にとって日吉チャンが特別ってことなんだろーけど。


少しずつ、翔が変わっていくのが分かる。


ギターを弾き初めてから
バンドを初めてから
日吉チャンに出会ってから



いつか翔が自分の話を全て日吉チャンに話す時が来たらもう一度、ありのままに話してあげようと思う。



「いやいや、青春ですねぇ~」


思わず、口元が緩み
けたたましく鳴く蝉の声に乗せて、鼻歌を口ずさんだ。


俺にも、早く青い春こねぇかなぁ~。



なんてな。





* * * *




「翔、最近楽しそうだな」

「ん~?そう?」

「いや、なんかいつもより生き生きしてるぞ」

「そー?」

「いや、だって鼻唄なんて滅多に歌わないだろお前・・・しかも、なんか・・・最近歌い方も変わった」

「そ~?」





・・・・・・・・・・・・





「どう思う?最近の翔。なんかやたら歌が色っぽくないか?」

「そう思う」

「イチもそう思うだろ?ありゃ絶対なんかあったぞ」

「そう思う」






・・・・・・・・・・・・





「翔~!!お前今日の休み時間なんで来なかったんだよ~!!階段とこに来いっつったじゃん!!」

「うん、ごめん亮介」

「ごめんじゃねーやい!!待ってたんだかんなー!!!!何してたんだよ~!!」

「日吉さんと喋ってた」

「日吉さん?誰それ」

「隣の席の女の子」

「へ~、めっずらしいじゃんお前が女子とお喋りなんてよ~!」

「うん、日吉さんは喋りやすい」

「ほぉ~~~?」

「今日は日吉さんがね~・・・・・・」





・・・・・・・・・・・・






「・・・原因はもしかしなくてもアレか?イチ」

「・・・そう思う」

「見ろ。翔の顔が珍しく生き生きしてる」

「そう思う」

「しかも鼻唄交じりだ」

「・・・珍しい」










ーー恋するちょっと前の


とある日の
SnakeFootの会話。