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「いや~!!!さいっこうだったな~!!大っ成っ功!!!!」
一曲だけのライブを終え再び控え室に戻ると
それぞれが額の汗を拭いながら、ソファーに腰かけた。
「あぁ。一曲だけなのが惜しいくらいだ」
やなぎんもにこやかにベースを膝に置きながらタオルで汗を拭った。
「満足」
イッチーが珍しく笑みを見せながら、ふぅ、と息を吐く。
「ヒャヒャヒャ!!おい翔!!じゃねぇや、ショウ!!お前はどうだったよ!!」
控え室に入るなり、視界の悪い翔はパイプ椅子に躓き、そのまま床に倒れ込んだきりピクリともしない。
まさか、死んだんじゃねーだろーな。
そんな心配をヨソに
少しだけむくり、と体を起こすと
「・・・眼鏡」
と、右手だけを差し出した。
「それよか感想!!今の心境は!!?」
「そんなことより眼鏡返してよ・・・」
「そんなこととはなんだよ!!そんなこととは~!!」
「・・・それがないと視界がぼやけて気持ち悪いんだってば」
もういっそレーシックかなんかしちまえよ。
ようやく眼鏡を装着した翔は、ゆっくりと体を起こし床に座り込んだ。
相変わらず汗一つ見せない翔は、やっぱり青白い顔で視線を部屋に向ける。
ボーっとした目はうつろでまるでなんも映してないみたいだ。
「どーだったよ?人前で歌った気分は」
「あんま覚えてない」
「なんだよソレ!!」
「緊張してそれ所じゃないよ・・・」
そんな翔に、やなぎんがペットボトルの飲料水を手渡すと、朧げな瞳のままそれを受け取る。
「なんか・・・変なかんじ」
「変なかんじ?」
やなぎんが笑みを浮かべながら、翔を見下ろす。
「うん。視界がぼやけてて何も見えなかったのもあるけど」
ペットボトルのふたを開けるのに苦戦している翔の手元からイッチーがソレを取り上げ、簡単に捻りあける。「ありがとう」と翔は力無くそう言うと、ペットボトルに口をつけた。
「頭が真っ白になるかんじ」
水を一口飲み込むと
息と共にそう吐き出す。
「なぁ、翔。バンドやっぱり入らないか?」
やなぎんの言葉に、ゆっくりと顔を上げる。
「やっぱり俺ら、お前の後ろで演奏したいよ」
「・・・・・・」
翔の眼鏡の奥の瞳が揺れている。
いつも鬱陶しく顔にかかっている前髪も、今はイッチーによって綺麗にピンで留められ、翔の白い額が丸見えだ。
一瞬、目を閉じた翔は
少しの間を置いて
「ーーー俺でよければ」
と、静かに頷いて
やんわりと笑みを見せた。
