真っ暗だった視界に急に色が戻って、慌てて周囲を見渡す。
見慣れた部屋。
ベッドの上。
そして、パジャマ姿の自分。
数秒経ってようやく、自分がまたあの夢をみていたことに気付く。数か月に一度決まってみる悪夢だ。
最悪の気分のまま起き上がると、じっとりと汗ばんで鉛のように重たい体を引きずるように階段を下りる。
憂鬱な1週間の始まりに溜め息を漏らしながら、リビングの扉を開いた。
「あ、おはよー」
蘭はどんよりした私の気分とは正反対の華やかな笑顔を浮かべていた。
予想をしていなかった出来事に、壁に掛けられた時計を慌てて確認する。
時刻はまだ6時。いつも通り。
ということは、おかしいのは私ではなく彼女の方だ。
「どうして起きてるの?」
「どうしてって失礼な。あたしだって早起きしたい気分の日もあるの」
幼い子どもみたいにプクッと頬を膨らませる蘭を横目に、寝起きの冴えない頭をフル回転させて考える。
朝の苦手な蘭が自ら早起きするのは、決まって彼女にとって楽しいことがある日だ。
例えば、遠足の日。
体育祭の日。
旅行の日。
でも2学期に入って2週目の今日は、その中のどれにも当てはまらない。
最初から大して興味もなかった私は、すぐにどうでもよくなって考えるのをやめた。エプロンを身に付けながら蘭に向かって「今日って何かあるの?」と直球で尋ねる。
鏡越しに目が合った彼女は「信じられない」と言いたげにあんぐりと大きく口を開け、手に持っていたヘアアイロンを鏡台の上に置くと、勢いよくこちらを振り返った。
「うっそ。凛、忘れたの?」
「え、もしかして私も関係あること?」
「そうだよ。今日!」
「今日?」
「転入生が来る日!」
見慣れた部屋。
ベッドの上。
そして、パジャマ姿の自分。
数秒経ってようやく、自分がまたあの夢をみていたことに気付く。数か月に一度決まってみる悪夢だ。
最悪の気分のまま起き上がると、じっとりと汗ばんで鉛のように重たい体を引きずるように階段を下りる。
憂鬱な1週間の始まりに溜め息を漏らしながら、リビングの扉を開いた。
「あ、おはよー」
蘭はどんよりした私の気分とは正反対の華やかな笑顔を浮かべていた。
予想をしていなかった出来事に、壁に掛けられた時計を慌てて確認する。
時刻はまだ6時。いつも通り。
ということは、おかしいのは私ではなく彼女の方だ。
「どうして起きてるの?」
「どうしてって失礼な。あたしだって早起きしたい気分の日もあるの」
幼い子どもみたいにプクッと頬を膨らませる蘭を横目に、寝起きの冴えない頭をフル回転させて考える。
朝の苦手な蘭が自ら早起きするのは、決まって彼女にとって楽しいことがある日だ。
例えば、遠足の日。
体育祭の日。
旅行の日。
でも2学期に入って2週目の今日は、その中のどれにも当てはまらない。
最初から大して興味もなかった私は、すぐにどうでもよくなって考えるのをやめた。エプロンを身に付けながら蘭に向かって「今日って何かあるの?」と直球で尋ねる。
鏡越しに目が合った彼女は「信じられない」と言いたげにあんぐりと大きく口を開け、手に持っていたヘアアイロンを鏡台の上に置くと、勢いよくこちらを振り返った。
「うっそ。凛、忘れたの?」
「え、もしかして私も関係あること?」
「そうだよ。今日!」
「今日?」
「転入生が来る日!」