シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

「おはようございますっ!」

控えめに、でも妙に元気な声が入口から響いた。

舞香と香奈衣が振り返ると、
“消防Tシャツに支給スラックス”という、やや浮いた格好で島崎が立っていた。

「……うわ、ちゃんと時間通りに来てる。雨でも降る?」

「やめてくださいよ店長、朝からそんな不吉な……」

苦笑しながら、島崎は足早にブースへ寄ってきた。

「ちゃんと署で副所に挨拶してから来ました。
“今日こそいいところ見せてこい”って、背中ドンされましたよ」

「副所長らしいですね。期待されてる証拠です」

舞香がそう言うと、島崎は照れたように手を後ろで組んだ。

「いやあ……期待っていうより、プレッシャーですけどね。
でも、こういう日くらい、誰かの役に立ちたいんですよ。ちょっとでも」

香奈衣はその言葉に、ちらりと横目を向けた。

「“ちょっとでも”ってところが、あんたらしいわね」

「いや、それが俺のリアルな目標なんで」

舞香はくすりと笑った。
島崎はこうして、いつも緊張をほどいてくれる。

きっとそれも、彼なりの“支える力”なのだと思った。