シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

訓練会場の片隅。
人波が落ち着き、午後の風がやさしく吹き抜けていく。

舞香は自販機の横に立ち、ペットボトルの水をゆっくりと口に運んだ。

(……あんなふうに、動けるとは思わなかった)

急な混乱。
胸は確かに早鐘のようだったのに、
足は止まらなかった。声も出た。

「大丈夫です」と言ったあの瞬間、
少し前の自分には、きっとできなかったと思う。

“あの人”に助けられた記憶が、
いつのまにか、心の中で“誰かを支えたい”という想いに変わっていた。

(守られてばかりじゃ、いやだな)

ふいにそう思った。

あの人は、たくさんの人を守る側の人間だ。
だったら私は、そばにいるだけじゃなくて――

そっと、背中を支えられるような存在になりたい。

誰かのために動くことが、
こんなにも自分を強くするなんて、知らなかった。

(少しずつでいい。
でも、ちゃんと変わっていきたい)

風が舞香の髪をふわりと揺らす。
その瞳の奥には、確かに揺るぎない“意志”が灯っていた。