シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

久瀬区地域連携防災訓練――当日。

市民に向けて公開された避難誘導の一環として、
舞香もカフェ代表として視察に訪れていた。

「こちら、案内図をお持ちください」

島崎が誘導用の地図を手渡していたが、少し様子がおかしい。

配布される資料に、マーカーの不備や記載ミスが相次いでいた。

「すみません、経路が書いてない地図が混ざってるんですけど……」

「えっ……あれ、まさか……!」

複数の市民がざわつき始め、島崎は冷や汗をかく。

「島崎さん……!」

舞香が小走りに近づいたとき、
後方から集団の動きが急に滞った。

「誰か、道を案内してくれませんか?」

「ここ通っていいんですか?」

人の流れが混線し始めたその瞬間、
舞香は咄嗟に手を上げた。

「大丈夫です。こちらでお待ちいただけますか?
すぐにスタッフの方が案内に向かいます!」

一歩踏み出した声に、周囲の動きがぴたりと止まる。

島崎はすぐに対応に入り、後方との連携を整えた。

そして――

「舞香さん、大丈夫ですか? さっき列が乱れて……」

駆け寄った朝比奈に、舞香は振り返って答えた。

「はい。少し混乱があっただけで、すぐに落ち着きました。
島崎さんの判断が早くて、安心できました。すごく頼もしかったです」

朝比奈は島崎に目をやり、静かに頷く。

「ナイスフォローです」

「……っす。次は、ミス自体なくします」

背筋を伸ばした島崎の横顔に、
朝比奈は静かにほほ笑んだ。