シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

プリンターの前で、島崎は深く頭を抱えていた。

「なんで、俺はいつも……」

独り言のようなつぶやきが、誰にも聞かれていないと思っていた。

「……らしくないね。島崎がそんな顔するなんて」

不意に後ろから届いた声。
振り向けば、香奈衣が静かに立っていた。

「香奈衣さん……どうしてここに……?」

「搬入時間の確認と、差し入れ。
ついでに、あなたが派手に空回ってるって聞いたから」

「……見に来たってことですね。
叱りに?」

「叱ってほしいの?」

「……本音言うと、ちょっと」

香奈衣はため息をひとつ落とすと、
差し入れの小さな紙袋を島崎の手に押し込んだ。

「甘いもん、ちゃんと食べな。脳みそ、糖分足りてないよ」

「えっ、あ……ありがとうございます」

「あとね。失敗するのが怖くて、期待されたいばかりだと、
ほんとに必要なもの、見失うよ」

島崎の目が、驚いたように動いた。

「……必要なもの、って」

「地に足つけて、顔を上げて。
誰のためにその資料作ってるか、思い出して」

叱っているわけではなかった。
でも、その言葉は、島崎の胸に深く届いた。

「……俺、あなたにそう言われるのが、一番効くみたいです」

「だったら、ちゃんと効かせて。
次、同じミスしたら、ほんとに説教だから」

にやりと笑った香奈衣の目元は、ほんの少しだけ――優しかった。