シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある


「……え、えっと、えっと……パーテーションの搬入って、今朝だったよな……?」

防災訓練を前にしたリハーサル日。
署の一角で、島崎が資料の前で額に手を当てていた。

準備リストには“要確認”の赤字が並び、
しかもその中のひとつ――来賓エリアの誘導案内図が、なぜか抜け落ちていた。

「……なんで、ここだけ抜けてんだよ……」

島崎は唇を噛む。
事前に確認していたつもりだった。

朝比奈にも、「任せてください」と胸を張って言っていた。
香奈衣の前でも、“がんばる自分”を見せたかった。

なのに――肝心なところで、また抜けた。

「島崎、誘導図の件、今確認中?」

後方から声をかけられ、思わずビクッとする。

「……はい。すみません、すぐ作成して提出します」

「急ぎな。全体の流れ止まるから」

隊員はそれ以上責めることなく、淡々と去っていった。
それがかえって胸に響く。

(俺、またやらかしてる……)

期待されてると、勝手に思って。
応えたくて、張り切って。

でも――“詰めが甘い”。

島崎は深く息をついて、プリンターへと駆け出した。
背中にのしかかるのは、自分自身への怒りだった。