シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

「そなえるカフェの休憩ブースは、来場導線の中央に配置してあります。
来場者の滞留が生まれるポイントだから、自然に立ち寄ってもらえるはずです」

朝比奈が手元の資料を指さしながら説明する。

「広報側の資料展示は少し奥に寄せて、舞香さんたちのスペースを邪魔しないように調整しました」

「ありがとうございます。……おかげで、やっと全体の形が見えてきました」

朝比奈が手元の資料を指さしながら説明する。

舞香は真剣な顔でメモを取りつつも、
少しだけ視線を横に流した。

「……さすがですね。
現場も知ってて、広報もできる人って、珍しい気がします」

「いえ、俺はただ、先輩たちの受け売りで動いてるだけです。
でも、最近は……“伝える”ことが、“守る”ことにつながるって思うようになって」

「……素敵ですね、それ」

何気ない会話。
だけどその言葉が、ぐっと胸に響く。

「舞香さんは」

不意に、朝比奈が彼女の名前を呼ぶ。

それだけで、彼女のまつげがわずかに震える。

「はい?」

「……ああ、いや。
こうして、並んで話すのって……悪くないなって。そう思っただけです」

「……わたしも、そう思ってました」

その瞬間、空気が少しやわらいだ。

ガラス越しの廊下には、そわそわと歩く若手隊員の姿。
一人がこっそり小声でつぶやく。

「……あれ、もう付き合ってんじゃないの?」

「いや、まだ“お互い気づいてない系”ってやつじゃない?」

「天野さんに言ったら怒られそうだから、内緒な」

そんなささやきが、あたたかい空気とともに署内を包み込む。

ここには、緊張も笑いも全部ひっくるめて受け止めてくれる、
“家族のような居場所”が確かにあった。