シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

数日が経った。
舞香は、病室の窓から差し込む陽の光を受けながら、お粥を口に運んでいた。

「……本当に、大丈夫だったのね」

そう言ってドアをそっと開けたのは、カフェの店長――香奈衣だった。
相変わらずきちんとした身なりで、けれど目元には心配の色がにじんでいる。

「香奈衣さん……」

「ニュースで火災のこと知って、まさかって思って。病院に問い合わせて、やっとここが分かったの」

彼女の声を聞いた途端、張りつめていたものが、ふっとほどけた。
泣くつもりなんてなかったのに、目の奥が熱くなる。

「……お客さん、みんな無事だったって。舞香が、逃がしてくれたのよね」

「うん……よかった」

ありがとう、という言葉を、舞香は喉の奥で飲み込んだ。
でも香奈衣は、それ以上なにも言わずに、静かに寄り添ってくれていた。