シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

患者を担架に乗せ、搬送の準備が整った。

「酸素、準備よし。バイタルは車内で確認します」
隊員の声に、朝比奈は頷く。

「久瀬記念病院病院受け入れ可能だそうです。じゃあ、向かいます」

担架が車両に押し込まれるその一瞬。
朝比奈は、店の前に立つ舞香と目が合った。

彼女は何かを言いかけて、けれど唇を閉じた。
代わりに、ふわりと頷いただけだった。

(……よく頑張った)

その一瞬に、言葉以上の想いが込められていた。

救急車の扉が閉まり、サイレンが響く。
バックミラーの奥で、舞香の姿が小さくなっていく。

それでも朝比奈の胸の中には、
しっかりと彼女の行動の記憶が残っていた。

(……落ち着いてた。迷わず動けてた。
ほんの少し前の彼女なら、違ったかもしれない)

緊張に震えながらも、誰かのためにできることを考えていた。
あの手の動き、声のかけ方、空気の読み方――どれも、彼女自身の言葉だった。

(この人となら、きっと)

言葉にするにはまだ早い。
でも、心は確かにそう感じていた。

一緒に歩く未来を、ふと想像してみたくなる――
そんな想いが、静かに灯りはじめていた。