シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

まぶたが重い。
けれど、どこかで誰かの声がした。

「……目、開いた」

ぼんやりと天井の蛍光灯が揺れて見えた。
機械の音、微かな酸素の流れる音。
アルコールと消毒液のにおい。

ここは――病院。

意識が戻ったのだと、ようやく気づいた。

舞香はゆっくりと呼吸を確かめながら、視線を巡らせる。
点滴。モニター。ナースコール。

隣に誰かがいるわけではなかった。
ただ、カーテンの隙間から、ナースらしき人の白い背中が遠ざかっていく。

彼の姿は、どこにもなかった。

それでも、胸の奥に焼きついたあの声だけは、なぜか鮮やかに残っていた。

「大丈夫だ、もう安心だよ」

あの温もりのある声だけが、今も鼓膜の奥で、何度も繰り返されていた。