シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

「こんにちは。……また、来ました」

午後のカフェ。
ちょうど客足が引いた時間帯に、朝比奈が姿を見せた。

舞香は笑顔で迎えたけれど、少しだけその笑顔が弱々しい。

「こんにちは。……お席、どうぞ」

「高島さん、今日ちょっと顔色、悪い気がします。
なにかあったんですか?」

「え……そう、ですか? 自分じゃあんまり……」

言いかけて、舞香はふっと視界が霞むのを感じた。

さっきから、少し頭がぼんやりしていた。
昨夜はイベントの疲れもあって、ほとんど眠れていなかった。

「……少し、立ちくらみしただけです。大丈夫です」

「座ってください。……無理しなくていいですよ」

朝比奈の声は低く、でも強い。
そのひと言に、舞香の膝がすっと力を抜いたように、カウンター横の椅子へ腰を下ろした。

「……ごめんなさい」

「謝らないでください。
誰だって、頑張りすぎたら身体にくる。……特に、あなただから心配なんです」

その“あなた”という言い方に、舞香の胸がかすかに波打った。

きっと、それ以上のことは言わない。
でも、十分だった。

言葉の端々ににじむやさしさが、
一番効く“処方箋”のように、舞香の心に染みていた。