シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

「なあ、香奈衣さんって、俺のこと避けてる?」

島崎のその問いに、香奈衣はきっぱり答えた。

「うん、避けてる」

「即答かよ!」

思わず椅子からずり落ちそうになった島崎を横目に、
香奈衣は何事もなかったように棚の整理を続ける。

「ていうか、あんた、絡み方が全部“中学生男子”なの。
おちょくるか、軽口か、やたらテンション高いか。
正直、まともに会話する気あるとは思えない」

「いや、それ……“恥ずかしいからからかってる”みたいな、あれで……」

「なおさらダメ。
大人が“好きな子にちょっかいかけて気を引く”って、見ててイタいから」

ずばりと斬られ、島崎は言葉を失った。

けれど、香奈衣はその後、少しだけ言葉をやわらかくした。

「……でも、ちゃんと話す気があるなら、聞くよ。
ウチのスタッフに絡んでくるチャラ男かと思ってたけど、
ちょっとはマシになったかもって思えてきたし」

「マジで!? それ、褒めた!?」

「半分だけね」

「十分だ……!」

落ち込みながらも嬉しそうな顔をする島崎に、香奈衣は小さく笑った。

このふたりの距離が、ほんの少しだけ近づいた瞬間だった。