シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

「誇らしかったです」

その言葉が、何度も頭の中でリピートされていた。

カウンター越しにやりとりを終えて、朝比奈が帰っていったあと。
舞香は片づけをしながら、自分の胸の音にだけ集中していた。

“誇らしい”なんて。
まるで、もっと特別な誰かに言うような、そんな言葉だった。

頬が火照っているのが、自分でもわかる。
冷水で手を洗っても、その熱はなかなか冷めなかった。

「……なんで、こんなにドキドキしてるんだろ」

ぽつりと呟いたその声は、自分でも思っていたよりも震えていた。

頼もしくて、穏やかで、
でもときどき見せる、照れたような表情。

それを思い出すたびに、
胸の奥がふわっと温かくなる。

「これって、もしかして……」

でも、言葉にした瞬間、何かが決定的になりそうで――
舞香は口をつぐんだ。

まだ“好き”と呼ぶには、怖さがある。
でも、“気になる”と呼ぶには、もう胸が騒ぎすぎていた。

感情に名前をつけられないまま、
それでも、彼の存在が確かに“心のどこか”を占めている。

それだけは、もう否定できなかった。