シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

――「今日も、似合ってます」

その言葉を思い出すたび、舞香の頬は自然と熱を帯びる。

イベントの最中、朝比奈は終始穏やかに笑っていた。
舞香のブース説明を静かに見守り、必要なときにさりげなくフォローしてくれた。

目立たないけれど、確かに寄り添ってくれる人。

「……あんなふうに、誰かと並んで仕事したの、初めてかも」

ひとりごとのようにつぶやきながら、
昨日使ったイベント資料を片付ける手が止まった。

手を伸ばせば、何かが届きそうな気がした。
けれど、その“何か”が何なのか、まだ言葉にはできなかった。

優しい声。
触れた指先の温度。
静かな、でも確かな存在感。

“あの人がいるだけで安心できる”――
それは、もうただの感謝じゃない。
けれど、恋と呼ぶには、まだ踏み出す勇気が足りなかった。

「……変だな、私」

誰にでもない問いかけに、小さく笑って手を動かす。

まだ気づきたくない。
でも、気づきかけている。

そんな自分の心に、舞香はそっと目を伏せた。