「災害時に、コーヒーなんて……優雅なもんね」
中年の男性客が、鼻で笑いながら言った。
舞香は一瞬、言葉を失いかけた。
けれど、胸の中に残っている記憶が、彼女を支えた。
――火災のあと、香奈衣さんにいただいて、病室で飲んだカフェラテ。
香りだけで、少しだけ“普通”を取り戻せた、あの一杯。
「……たしかに、贅沢に思えるかもしれません。
でも、避難生活って、いつ終わるか分からない毎日で……
そんな中で、普段通りのことを“ひとつだけでも”できると、
心が少し落ち着いて、気持ちが楽になる方も多いんです」
男性は一瞬、目を伏せた。
その表情は、否定ではなく、何かを思い出すようなものだった。
「……なるほど。たしかに、そういうの、あるかもな」
小さな納得とともに、ブースの前に静けさが戻ったとき――
「はいはい、おつかれ〜! 舞香、ちゃんと喋れてたじゃん」
背後から声がして振り返ると、香奈衣が颯爽と現れた。
スッとまとめた髪に、シンプルなブラウスとパンツスタイル。
いつもより少し大人っぽいその姿に、舞香は思わず見惚れてしまった。
「店、ちゃんと若い子に任せてきたし。
あたしがいない方が店の売り上げいい気すらするわ〜」
そう言って笑う香奈衣の姿に、
舞香の緊張がふっと解ける。
「……来てくれて、ありがとうございます」
「当たり前でしょ。
あんたが頑張ってんのに、見ないわけないじゃん」
ぶっきらぼうで、強引で、でも――
やっぱり、背中を押してくれる。
香奈衣が来たことで、舞香の心に、またひとつ勇気が増えた気がした。
中年の男性客が、鼻で笑いながら言った。
舞香は一瞬、言葉を失いかけた。
けれど、胸の中に残っている記憶が、彼女を支えた。
――火災のあと、香奈衣さんにいただいて、病室で飲んだカフェラテ。
香りだけで、少しだけ“普通”を取り戻せた、あの一杯。
「……たしかに、贅沢に思えるかもしれません。
でも、避難生活って、いつ終わるか分からない毎日で……
そんな中で、普段通りのことを“ひとつだけでも”できると、
心が少し落ち着いて、気持ちが楽になる方も多いんです」
男性は一瞬、目を伏せた。
その表情は、否定ではなく、何かを思い出すようなものだった。
「……なるほど。たしかに、そういうの、あるかもな」
小さな納得とともに、ブースの前に静けさが戻ったとき――
「はいはい、おつかれ〜! 舞香、ちゃんと喋れてたじゃん」
背後から声がして振り返ると、香奈衣が颯爽と現れた。
スッとまとめた髪に、シンプルなブラウスとパンツスタイル。
いつもより少し大人っぽいその姿に、舞香は思わず見惚れてしまった。
「店、ちゃんと若い子に任せてきたし。
あたしがいない方が店の売り上げいい気すらするわ〜」
そう言って笑う香奈衣の姿に、
舞香の緊張がふっと解ける。
「……来てくれて、ありがとうございます」
「当たり前でしょ。
あんたが頑張ってんのに、見ないわけないじゃん」
ぶっきらぼうで、強引で、でも――
やっぱり、背中を押してくれる。
香奈衣が来たことで、舞香の心に、またひとつ勇気が増えた気がした。



