シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

朝の光が、カーテン越しに優しく差し込む。
舞香はキッチンのテーブルに並べた材料を、一つひとつ確認していた。

防災ミールキット、折りたたみ式のレシピカード、使い捨てカップ、カフェロゴ入りの小さなタグ。

「よし……忘れ物、ないはず」

深呼吸するたびに、胸の奥が少しだけ波打った。
フェアという場に立つのは、初めてのこと。
それに、きっと彼も、そこにいる。

そう思うと、緊張と期待が入り混じって、
心臓の音がいつもより響いていた。

「舞香、荷物詰めるの手伝おうか?」

香奈衣が部屋の奥から顔を出す。
いつもと同じようでいて、どこか“送り出す側”のまなざしをしていた。

「大丈夫。……でも、ありがとう」

「ふーん。
じゃあ、せめて見送りくらいしてあげる。渋滞したらぶつかっちゃうからね」

唐突にそんな言葉を投げかけられて、舞香は一瞬きょとんとした。

でもすぐに笑ってうなずく。

「……それ、名言ですね」

「でしょ?」

香奈衣は口元だけで笑って、そっとドアを開けた。

今日、何があるかなんてわからない。
でも、何かが変わりそうな気がしていた。

そんな“始まりの鼓動”を胸に、舞香は会場へと向かっていく。