シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

「へえ〜、舞香にそんなに話しかけられる男の人、珍しいなぁ」

ふいに背後から聞こえた声に、島崎がピタリと動きを止めた。

「わっ、びっくりした……あ、もしかして、店長さん?」

「そう。山田香奈衣、店長やってます」

香奈衣は腕を組んだまま、じっと島崎を見下ろしている。

「で? この距離感、なんか軽くない?」

「え、いや、あの……業務上のコミュニケーションで……っ!」

珍しくたじたじとする島崎に、舞香は思わず笑ってしまった。

香奈衣はくっと口角を上げ、続ける。

「ふーん。舞香に気があるとかだったら、ちょっとやっかいかなって思って」

「な、なんでそうなるんですか!? まだ一回目の打ち合わせですよ!?」

「“まだ”って言った」

「いやいやいやいや、そういう意味じゃなくて……っ!」

ひとりで慌てる島崎をよそに、香奈衣は満足げに厨房に戻っていく。

「……ごめんなさい。店長、ああいう人なんです」

「いえ……なんか、すごく……強いですね。あの人」

「はい。でも、頼れるんです」

そのやりとりを横目に、店の外でドアが静かに開いた。

カラン――

振り返ると、そこには――
制服姿の朝比奈が、立っていた。