シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

肩に腕をまわされ、ゆっくりと抱き起こされる。
舞香の顔が、その胸元に預けられた。

――あったかい。

焼けた空気の中で、彼の体温だけが、どこか別の場所にいるようだった。
酸素ボンベのマスクをそっとあてられ、彼の指が頬に触れる。

「大丈夫だ。もう安心だよ」

それは、たったひと言。
でも、誰にも言ってもらえなかった言葉だった。

重力から解き放たれるように、舞香の意識がふっと途切れる。

暗闇のなかで最後に聞いたのは、階段を駆け下りる音と、彼の低い声。

「搬送急いで! この人、呼吸が浅い!」

そうして舞香は、彼の腕の中で――火の中から、命を繋がれた。