シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

非常階段の踊り場で、舞香はひざをついた。
酸素が足りない。
吸っても吸っても、喉が焼けるようで、ぜいぜいと喘鳴が漏れた。

「あと、もう少し……」

客たちは無事に地上へ逃げた。
その事実が、わずかな安心と引き換えに、彼女の体力を奪っていく。

と、そのときだった。

「要救助者、ひとり倒れてます! 女性、二階非常口前!」

がたん、と金属の音。
ドアが勢いよく開かれ、差し込んだ光の中に――男の影が現れた。

「高島舞香さんですね? 今、助けます!」

低く、けれど包み込むような声。

息苦しい視界のなかで、舞香はその声のぬくもりだけを、確かに覚えていた。