シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

「……もう、大丈夫そうですか?」

しばらく呼吸を整えたあと、朝比奈がそっと声をかけた。

舞香は、ゆっくりと背を伸ばしながらうなずいた。
顔色はまだ少し青いが、呼吸は明らかに安定していた。

「すみません……情けないですね、私」

小さく呟いた舞香の声に、朝比奈は首を横に振った。

「情けなくなんかない。
むしろ、ちゃんと対処できたから、こうして落ち着けたんです。……本当に、よかった」

彼の声は、あの日の“安心させるための声”と、どこか似ていた。
でも今は、それよりもっと“個人的な何か”が含まれている気がした。

「……なんで、ここにいたんですか?」

意を決して聞いた質問に、朝比奈は少しだけ間を置いて答えた。

「なんとなく。……今日は、何となく、こっちの道を歩きたくなっただけです」

その言葉が、舞香の胸の奥にやさしく触れる。

それが偶然じゃなくても、偶然のように語ってくれる――
そんな優しさを、いまの舞香は素直に受け止めたかった。