シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

コーヒーの香りと静かな会話。
少しずつ緊張がほどけ、舞香の表情にもやわらかな笑みが戻っていた。

けれど、ふいに――
喉の奥が少し、乾いたように感じた。

「……っ」

声を出そうとした瞬間、軽い咳がこみ上げる。
手で口を押さえ、何事もなかったふりをする。

「……大丈夫ですか?」

すぐに朝比奈が身を乗り出した。
その気配に、舞香は慌てて笑顔を作った。

「すみません。たぶん、空気が乾燥してて……」

「喘息、ですよね」

その言葉に、舞香は少しだけ目を見開いた。
覚えていてくれたんだ。
あのとき、救ってくれたときの、ことを。

「……はい。でも、普段は軽いので」

「でも、油断しないでください。
一度ひどくなると、思ってる以上に体力削られますから」

彼の声は、ふだんよりも少しだけ低くて、真剣だった。
舞香は、小さくうなずいた。

「……ありがとうございます。そうですね。気をつけます」

その気遣いが、ことさらあたたかく、沁みた。