シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

「……でも、消防や救急って、本当に大変なお仕事ですよね」

舞香の言葉に、朝比奈は少しだけ口元を引き結んだ。
すぐに言葉を返さなかったその沈黙が、彼の誠実さを物語っていた。

「……そうですね。
命が関わる現場は、やっぱり……“慣れたくない”って思います」

「慣れたくない、ですか?」

「うん。毎回、状況は違うし、
“このくらいなら大丈夫”っていう慢心が、一番危ないんです」

淡々と語る口調のなかに、強い覚悟のようなものが滲んでいた。
その真っ直ぐな姿勢に、舞香は小さく息をのんだ。

「それに……」

「それに?」

「人の痛みに、鈍感になりたくないんです」

そのひと言が、妙に静かに、心に落ちた。

舞香は、彼のことをほとんど知らない。
けれどその言葉の重みだけで、どれだけ真剣に日々を生きているのかが、少しだけ伝わった気がした。

「……やっぱり、すごいですね」

「いえ、全然。……ただの、習慣です」

また“習慣”という言葉を使った彼に、舞香は思わず微笑んだ。

この人の言う“習慣”は、きっと――誰かを守ろうとすることそのものなんだ。