シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

天井の換気口の隙間から、うっすらと白い煙が漏れていた。
誰かが椅子を立ち上がる音、ざわつく声――
舞香の胸に、じわりと緊張が広がる。

「みなさん、落ち着いてください。一度、外へ出ましょう」

自分の声が、意外なほど冷静に響いた。
足が震えていたのに、手はしっかりとレジ横の非常ベルを押していた。

後方の厨房の方から、パチ…パチ…と乾いた音が聞こえる。
煙が、あっという間に視界を覆ってくる。

「階段はこっちです!ゆっくり、でも急いで!」

いつもより少し大きな声を出しながら、舞香はお年寄りたちを誘導していった。

――息が、少し、苦しい。

胸の奥がちくりと痛み、視界の端がかすみ始める。