シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

「おひとりですか?」

そう声をかけた自分の声が、ほんの少しだけ上ずっていた気がした。

朝比奈は、いつもの制服姿とは違う、少しラフな印象だった。
けれどその目は、やはりまっすぐで、静かにこちらを見ている。

「はい。……ちょうど近くで研修があって。
前に、お店をされてるって聞いたので、寄ってみました」

あくまで“偶然”の体を装っている。
けれど、それが本当かどうか――舞香にはもう、どうでもよかった。

「ありがとうございます。席、ご案内しますね」

奥の窓際。いつもなら常連が座る場所。
そこに彼を通すとき、指先がほんの少し震えた。

「メニュー、お決まりになったらお声がけください」

精一杯、いつも通りの笑顔を向ける。
でもその背中には、自分でも気づかぬまま、小さな高鳴りが宿っていた。