シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

ロッカールームの鏡に映る自分の顔は、どこか疲れて見えた。
現場で流れる時間は容赦がない。
今日も搬送が重なり、終わらないレポートが山になっている。

だけど、思考の隙間に、彼女の顔がすっと入り込んでくる。

救ったはずなのに、
あの場にいた“ただの市民”として切り離すことが、どうしてもできない。

「……まずいな」

小さくつぶやいて、ロッカーの扉を閉じた。

副所長の言葉が脳裏をよぎる。
――感情を持ち込むな。お前のためにも、相手のためにも。

そうだ。わかってる。
それでも、あの人を想う気持ちが、じわじわと輪郭を持ちはじめているのがわかる。

また会いたいと思ってしまった時点で、
すでに何かが、変わり始めていたのかもしれない。