シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

午前八時、開店と同時に、常連の老夫婦がやってきた。
舞香はいつものように笑顔をつくり、深くお辞儀する。

「おはようございます。外、寒かったでしょう?」

「いやいや、舞香ちゃんの笑顔であったまったよ」

そんな言葉に、胸の奥がぽっとあたたかくなる。
カップに注ぐお湯の音、スチームミルクの香り。
いつもの朝、いつもの空気――
けれど、その静けさに、ほんの僅かな違和感が混じったのは、そのすぐ後だった。

「……なんか、焦げくさい?」

客のひとりがそう呟いた瞬間、空気の中に確かに――煙の匂いが漂い始めていた。