シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

玄関の鍵を閉めると同時に、
ふたりの距離がふたたび近づいた。

「こっち、こっち……」
舞香が手を引いて、ランタンが灯るリビングへ海斗を案内する。

ソファに腰を下ろすと、途端に空気がやわらぐ。
灯りは弱いけれど、ふたりの表情を照らすにはじゅうぶんだった。

「……舞香、大丈夫って言ってたくせに、目、泣いたあとじゃん」

「……だって、ほんとに心配だったんだもん」

「……そっか」

海斗はそっと、舞香の頭を自分の肩に預けるようにして、
その髪をやさしく撫でた。

「よくがんばったな。俺がいない夜に、ちゃんと待っててくれて」

「……うん。でも、本当は……すごく不安だった。
……でも、海斗さんの声見た瞬間、涙が勝手に出てきちゃって」

「……泣き虫」

「泣き虫じゃないもん。心配してたんだよ……」

ふくれたように言う舞香の頬に、
海斗はひとつ、キスを落とす。

「……泣き虫でも可愛いから、いい」

「……っ」

耳まで熱くなった舞香は、
顔をそむけるようにしながらも、
彼のシャツの裾をぎゅっと握った。

「ねえ……もうちょっとだけ、甘えてもいい?」

「もちろん。今日は、甘やかしモードだからな」

「じゃあ……そのまま、くっついてて」

「わかった」

ふたりはブランケットを分け合って、
海斗は舞香を自分の膝の上に抱くようにして座らせる。

「……あったかい」

「……俺も。舞香、ちょっと冷たくなってたな」

「だって、ずっとブランケットひとりだったもん」

「今日は俺がブランケットな。ずっと、包んでてやる」

「……ん、ありがと」

そのやり取りの合間にも、
海斗の唇は、額、こめかみ、頬、耳へとやさしく触れてくる。

どのキスも熱くも優しく、
舞香の体温と心をゆっくりとあたためていく。

「ねえ、海斗さん」

「ん?」

「……耳、触ってほしくない」

「なんで?」

「だって……そこ、触られると、私……」

「……とろん、ってなるもんな」

「っ! 言わないで!」

くすっと笑った海斗は、それ以上触れずに、
ただぎゅうっと抱きしめた。

「今日は、安心させるのが先」

「……ん、わかった」

外の世界がどんなに騒がしくても、
ふたりの世界は――こうして穏やかに包まれていた。